研究課題/領域番号 |
18K18740
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
深尾 浩次 立命館大学, 理工学部, 教授 (50189908)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | レーザートラップ / 液晶滴 / 液滴 / マランゴニ対流 |
研究実績の概要 |
本研究では、レーザーピンセットを用いて、カシミール力の測定を行う研究を提案している。レーザートラップを行う微粒子の適切な選択に難航したため、今年度は液晶系が作る液滴をレザートラップに用いて媒体として微小力測定の可能性を探ることを目的として、液晶滴運動の定量化を行った。 液滴が溶解する際に発生する表面張力の不均一性により、マランゴニ対流が誘起されることが知られている。この対流を動力として、球状の液滴が溶液内を自走する現象が数多く報告されている。その際、液滴の代わりに液晶滴を用いれば、液晶の内部配向、滴サイズ等の条件により、自走のパターンがランダム、並進、らせん運動への変化が知られている。このような液滴、液晶滴の運動をレーザートラップによって制御することにより、これらの滴に働く力の精密な測定が可能になることが期待される。その力の測定を臨界高分子混合系下で行うことができれば、カシミール力の測定へとつながる可能性がある。 これら、液滴、液晶滴の運動とそれに伴う、液晶滴内部の配向場の変形の観測を今年度行った。本研究では、液体溶媒としてフッ素鎖系オリゴマーPF656を用いた。液晶はこれにある程度溶解するので、PF656中に液晶滴を分散させることによりマランゴニ対流が発生し、同時に、液晶はPF656よりも比重が小さいため、液晶滴をPF656の上に安定に浮かせた状態を実現することができた。この状態で、液晶滴が溶解する際のダイナミクスを観察、解析し、特徴的なモードの運動を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、カシミール力の測定がメインとなり、その測定をレーザーピンセットを用いて行うことを主要な目的としている。当初、レーザーピンセットによる微小力に測定に必要な微粒子として、ラテックス粒子を予定していたが、これまでの実験により、十分な精度での測定が難しいことが判明した。そのため、レーザートラップが可能で、必要な条件を見たす新たな微粒子の選択を行うことが必要となった。これまでに、様々な系を調べ、液晶滴が適切な系であると考えるに至った。このように、当初想定しなかった対象の変更が生じたため、予定よりも研究の進捗に時間がかかっていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
現在、対象としている液滴、液晶滴の非平衡下でのダイナミクスを明らかにし、レーザートラップを用いてのカシミール力測定の際の媒質となり得るかどうかの検討を行い、当初の目的達成に向けて研究を進めたい。 とくに、2019年度に行った液滴、液晶滴を用いた微小力の計測は有効であると期待しているので、その基礎となる液滴、液晶滴の自走運動の解析をさらに進めて行きたいと考えている。また、レーザーピンセット系の調整も引き続き行う予定で、トラップサイト位置を正弦関数的に動かすことにより、アクティブレオロジー測定の精度および周波数範囲の拡張にも取り組みたいと考えている。これらを総合して、延長した1年間で当初の目的達成に向けて頑張って行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中にレーザーピンセット系の調整を終える予定であったが、レーザーが不調であり、その調整に時間を要した。また、3月上旬に発表予定であった米国物理学会での発表が新型コロナウィルスの関係でキャンセルとなった。これらが次年度使用額が生じた理由である。繰り越した額については、レーザーの調整、国際会議での旅費、液晶試料の購入などに充てる予定である。
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