研究課題/領域番号 |
18K18741
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
和田 浩史 立命館大学, 理工学部, 教授 (50456753)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 幾何力学 / 弾性シェル / スナップ座屈 / 幾何学的剛性 |
研究実績の概要 |
初年度には、リボン状の弾性シェルにかんして、主に二つの成果を得ることができた。ひとつめは、ねじりによって誘起するスナップ座屈現象である。紙やプラスチック薄膜からなるリボンを半円をなすように拘束し、両端を同じ方向に回転させていく。すると、リボンははじめ面外へたわむように変形するが、そのあと跳ねかえり、パチンという音とともに表と裏が反転して初期配置に戻る。この反転現象はスナップの一種であるが、ねじりをともなった3次元的動きが生じるため、過去の研究例よりも非自明で興味深い性質をもつ。我々は実験、理論、シミュレーションを組みあわせ、この現象の仕組みを明らかにし、その成果を論文にまとめてPRLに出版した。リボンのねじりスナップ現象は、曲げとねじれの幾何的な結合をうまく利用しているので、両端の境界条件を調整するだけで、蓄えた弾性変形エネルギーを、思いどおりのタイミングで一気に運動エネルギーに変換することができる。しかも、このサイクルプロセスは、繰り返し何度でも行うことができる。これは、応用を考えるうえでも好ましい性質である。もうひとつは、円筒形弾性シェルの線形特性についてである。我々は円筒シェルの一端をピンチし、誘起した変形が軸に沿って減衰し、シェルが元の形状に戻るまでの長さ(回復長)を調べた。まず、浅い半円筒シェルに対して回復長の新しいスケーリング則を理論的に導出した。次に、有限要素法による数値シミュレーションと実際の模型をもちいた精度の高い測定実験を実施し、このスケーリング則を確立した。加えて、これらの実験結果から、浅いシェルに対して導いたスケーリング則が、任意の深さのシェルに対して正当であることを発見した。以上の成果を論文にまとめてEPLに出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた「曲率をもつシェルの幾何学剛性を特徴づける」という研究に加えて、弾性リボンが示す新規なスナップ座屈現象という、非常に関連例の深いテーマで成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年めにあたる本年度は、初年度の成果をふまえて、断面に曲率をもつシェルの折れ畳み(folding)について、実験と理論の両面から研究を進める。現在、幾何力学の分野では、折り紙を中心としたメカニカルメタマテリアルの研究が盛んである。しかし、曲線折れ目をもつ平面がどのように3次元的に構造を形成するか、あるいは、曲面の測地線を折れ線として持つ曲面構造が折れ畳みによってどのような3次元構造をとるか、といった問題については、力学的にアプローチすべき課題が数多くある。本研究の申請書では「曲率をもつシェルの大変形」をテーマとして掲げたが、これは上記の問題を自然と含む問題設定になっている。この点を踏まえ、実験と数値シミュレーションの両面からこの問題に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月中に全額執行したが、4,148円分の伝票の処理が期日に間に合わなかったため、繰越となった。本報告書作成時に、すでに伝票の処理は終わっており、実質的に初年度の支給額を年度内に使用したことに相当する。
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