研究課題
重い電子や価数揺動を示すYb化合物においては、圧力によってイオン半径の小さな3価状態が安定化されるため、通常は圧力によって量子臨界点を経て磁気秩序が誘起される。しかしながら、我々はYbCu5などの重い電子系物質において、圧力で逆にYb価数が減少し、リエントラント価数揺動を示すという極めて異常な現象を発見し、その解明のために良質試料作製、物性測定、圧力下分光測定を行ってきた。その結果、Yb2Cu9やYbInCu4系などにおいても圧力による価数の減少が新たに見出された。本年度はその解明のため圧力下の結晶構造と格子体積の変化についても詳細に検討した。実験はSPring-8の台湾ビームラインBL12XUで行った。YbInCu4においては、約15 GPa以上の高圧でYb価数の減少という異常が観測され、その圧力範囲において、結晶格子の収縮が緩やかになるという現象が観測された。同時にCuの原子座標の圧力変化にも異常が見られることがわかった。一方、参照物質として測定したYbサイトに非磁性のYを置換した試料では、これらの異常は観測されなかった。このことは、圧力によるYbの価数異常が結晶構造の圧力変化に強く関連していることを示唆する。これらの成果は論文2報に発表された。研究の過程で他のYb化合物における圧力誘起一次相転移もいくつか見出しており、論文発表の予定である。さらにYbCo2という立方晶ラーベス相化合物においては極めて重い電子状態が低温で観測され、磁場誘起相転移を示すという顕著な振る舞いも発見し、論文で発表した。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 92 ページ: 064704
10.7566/JPSJ.92.064704
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 35 ページ: 285601
10.1088/1361-648X/acca5a
巻: 91 ページ: 124701
10.7566/JPSJ.91.124701
https://samurai.nims.go.jp/profiles/tsujii_naohito