前年度までに,低温プラズマ中に微生物を浮遊させる実験装置の作成を行い,肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)や大腸菌(E. coli)などの10μm程度の菌,30μmの粒径を持つヒノキ花粉などがRFプラズマ中に浮かぶことを実験的に確認した.また,プラズマ中に浮かぶ微生物に外部から電場を印加し,菌種により応答が異なることを明らかにした. 今年度は,主に微生物の三次元位置計測手法の開発を行った.マルチレンズを通して撮像することで視差のある像を取得し、インテグラルフォトグラフィーとデコンボリューションを用いて,三次元情報を一方向から取得できるシステムの構築を進めた.レンズアレイは直径2.2mm程度の凸レンズを9x6並べたものを使用している.少しずつ異なる画像が54枚撮影できるので,そこから光線追跡を行うことにより,微生物の位置を特定できる.微粒子の数が多いと光線が偽の交点(Ghost)を作る.今回はこれにルーシー・リチャードソン・デコンボリューションを適用することで,Ghostを除去することに成功した. また,微生物には球形でない物が多く存在し,そのような場合には形状による効果を考慮する必要がある.形状による効果に注目するため,糸状の微粒子やヘリカル形状の微粒子をプラズマ中に浮かべ,その挙動を観察した,糸状微粒子は短いものは電場に沿って縦向きに浮遊するが,長いものはシースに沿うように横向きに浮遊する傾向が確認された.ヘリカル状の微粒子は電場に沿って縦向きに浮遊し,方位角方向に回転する様子が観測された.これらの事実は,微生物の形状がプラズマ中での運動に大きく影響することを示唆するものである.
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