研究課題/領域番号 |
18K18758
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柏木 茂 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (60329133)
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研究分担者 |
坂上 和之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 主幹研究員 (80546333)
渡邉 謙 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (70534816)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 加速器 / 電子ビーム / 光陰極 |
研究実績の概要 |
本研究では、電子ビームの加速にテラヘルツ波を用いるテーブルトップサイズのテラヘルツ駆動電子加速器の実現に向けた基礎研究を行う。そのシステムは、レーザー光で電子ビームを生成し、レーザー光で加速電場となるテラヘルツ波を発生する、全「光」ベースの電子加速器である。テラヘルツ波駆動電子加速器の重要な構成要素である粒子源(電子源)と加速構造体について、その試験機を製作してそれらの基本性能を評価することを目指す。 粒子源に関しては、光陰極型の直流高圧電子銃の試験機製作を行う。当該年度は電子銃の高圧システムに関する検討を行い、電子銃の印加電圧は90kV直流とすることに決定した。また、光陰極用のレーザーおよび陰極材質に関する検討を研究分担者である坂上氏を中心に行った。時間応答製の良いアンチモン系陰極(例えば、KCsSb)にYbファイバーレーザーの2倍波を照射することをベースに検討を行った。Ybレーザーに関しては、ほぼシステム設計を完了することができたが、陰極システムについてはロードロックシステムなどが必要となり、システム全体が大がかりとなり本研究期間中にシステムを構築することは困難だと判断し、量子効率は下がるが無酸素銅を陰極に用いることを検討することとした。現在、レーザーに関する要求を明確にしているところである。 一方、加速構造体についての検討は、分担者である渡邉謙氏を中心に電磁場解析コードを用いて、試験器の設計を進めている。検討中の加速構造体は、誘電体(SiO2)の周りを無酸素銅で取り囲む構造とすることとした。当該年度は試験機を制作するための準備を主に行い、1THz~2THz付近のテラヘルツ波を加速構造体に入力し、その減衰係数などを次年度計測することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テラヘルツ波駆動電子加速器を実現するためには、その電子源および加速構造体の開発が必要不可欠である。電子源についての要求は生成される電子ビームがテラヘルツ波の波長よりも十分に短いことが要求される。現在、直流90kVの光陰極電子銃を制作することを計画しており、時間幅50~100fs程度のYbレーザーパルスをカソードに照射 して、短パルス電子ビーム生成を目論んでいるが、カソードから放出された電子ビームが空間電荷効果により伸張してしまうことがシミュレーションにより分かった。レーザーのパルス圧縮は波長分散から70fs程度が限界であるため、現在は電荷量を減らして空間電荷効果の影響を小さくする方向で検討を進めている。電子銃から出射される電子ビームの伸長が予想よりも大きいため、パラメータの最適化などに時間を要している。 また、加速構造体についてはその構造のおおよそのパラメータは決定することができ、精密加工のできる幾つかのメーカーと現在やりとりを行っている。また、その際に加速構造体にテラヘルツ波を入力する結合器における減衰やモード変換が重要な課題としてある。特に、モード変換については試作機の試験に用いるテラヘルツ波の偏光状態などが関係するため注意深くその設計を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終的な目的は、レーザー光で電子ビームを生成し、レーザー光で加速電場(テラヘルツ波)を発生する、全「光」ベースのテラヘルツ波駆動電子加速器を提案することであるが、そのための加速器主要コンポーネントである電子源と加速構造体についてその性能、信頼性、実現可能性を精査する。 当該年度は電子源および加速構造体の基本設計を行い、電子源の陰極から出射された電子ビームの空間電荷効果による伸長が問題であることが分かった。ビーム計測から決まる電荷量制限をもとにパラメータを早急に決め、電子源の試作機製作に取りかかる。 加速器構造体は本年度前期中に結合器部のモード変換の問題を解決し、試作機製作を行う。東北大学電子光理学研究センターの試験加速器で発生したテラヘルツ波(2THzのコヒーレントアンジュレータ放射を使用予定)を使い評価を行う。またテラヘルツ波源に関しては、将来的にレーザーベースの光源を使用することを予定しており、理研仙台で現在開発中の光注入型テラヘルツパラメトリック発生器(is-TPG)に関する情報収集も行って行くこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、以下の2つの理由から次年度の使用額が生じてしまった。1つは、電子源の設計およびパラメータに関する考察に時間を要したため、光陰極照射用レーザーおよび電子源高圧部の製作にとりかかることができなかったためである。もう1つは、加速構造体のテラヘルツ波入力結合部のモード変換について、最終的な設計ができなかったため製作に取りかかることができなかった。 僅かな研究の遅れはあるものの解決不可能な事柄は生じていない。当初予定した試作機の製作を次年度前期に行い、予定通り試作機の基本性能評価を実施する予定である。
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