研究課題
本研究ではプランク質量(約22 μg)を大幅に上回る1 mg鏡のエンタングルメントを実現することで、巨視的な世界においても量子力学は成立するのかという問いに実験的に迫る。そのために、光輻射圧のみを用いて鏡を光学浮上させる新提案の技術により鏡を環境から孤立させる。この浮上鏡を2つ用意するが、このとき用いるレーザー光を同一光源から供給することにより2つの浮上鏡の位置の間に量子力学的な相関を持たせる。鏡の位置測定における古典雑音が不確定性関係で決まる標準量子限界を下回っていれば、2つの鏡の位置がエンタングルメント状態になる。この持続時間を測定することにより、量子力学と一般相対論を繋ぐモデルの検証を行う。本研究は鏡の光学浮上を世界で初実現することにより肉眼で見えるほど巨視的な鏡の間のエンタングルメントをも世界で初実現するという挑戦的な研究である。実現されれば、これまで検証が困難とされてきた量子測定理論や量子重力理論に実験的に迫ることが可能となる。2018年度は鏡の光学浮上の実現に向けて、浮上鏡をねじれ振り子の一端に取り付けることで、浮上鏡に働く復元力を測定する実験を進めた。安定な光学浮上の実現のためには全6自由度に復元力が働く必要があり、その復元力が設計通り働いているかを測定するのが極めて重要となる。本年度はねじれ振り子に取り付けた浮上鏡の上下に共振器を構築し、特に上側共振器の制御に成功し、最大で共振器内パワーを3.1Wまで高めることができた。光輻射圧による水平方向の復元力を測定したところ、(1±2)×10^{-5} N/mという結果を得た。今後、有意な復元力を確認するためには光共振器内パワーの上昇と、パワーの安定化が必要となる。また、ねじれ振り子の機械的な復元力を下げることによる精度向上を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
2018年度はねじれ振り子を用いた光輻射圧に起因する復元力の測定を行う予定であったが、十分な精度を得ることができなかった。一方で光学浮上に必要な光学系を真空槽内にほぼ組み上げることができたので、おおむね順調に進展していると言える。
2019年度はねじれ振り子と光共振器の改良により、確実な復元力の測定を目指す。また国内メーカーやフランスのグループとの協力をこれまで以上に推進することで、高品質な浮上鏡の製作を進める。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 5件、 査読あり 10件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 6件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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