研究課題
本研究ではプランク質量(約22 μg)を大幅に上回る1 mg鏡のエンタングルメントを実現することで、巨視的な世界においても量子力学は成立するのかという問いに実験的に迫る。そのために、光輻射圧のみを用いて鏡を光学浮上させる新提案の技術により鏡を環境から孤立させる。鏡の光学浮上の提案はこれまでにいくつかの手法が提案されているが、これまで実現された例はない。光学浮上では鏡の全6自由度を光のみを用いてトラップする必要があるが、特に重要なのが鏡の水平方向の運動に対するトラップである。昨年度である2019年度は、浮上鏡に働く水平方向の復元力の測定に成功した。浮上鏡をねじれ振り子の一端に取り付け、ねじれ振り子の共振周波数変化として、復元力の測定を行い、これが理論と矛盾しないことが確認できたのである。これにより、我々が提案しているサンドイッチ構成での光学浮上が実験に可能であることが実証できた[Phys. Rev. A 102, 053520 (2020)]。2020年度は光学浮上鏡の作製とその性能評価を進めた。光学浮上の実現のためには、曲率のついた1 mg鏡が必要であるが、その作製は困難である。よく用いられる石英基材を用いる場合は、直径3 mm程度、厚さ0.1 mm程度のサイズである必要があり、曲率半径30 mm程度の曲率が必要となる。単純にこのサイズの石英基材に高反射率コーティングを施すと、コーティングの応力により基材が割れてしまうという問題があった。そこで、大きなサイズの基材にコーティングし、その応力により曲率をつける手法の開発を進めた。これにより、直径1 inch、厚さ0.1 mmの曲率付き鏡の開発に成功した。また、フォトニック結晶を用いて実効的に曲率を持たせる手法の開発も同時に進めた。2020年度は95%程度の高い反射率を持つフォトニック結晶ミラーの開発に成功した。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 7件) 備考 (1件)
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