研究課題/領域番号 |
18K18764
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山口 昌英 東京工業大学, 理学院, 教授 (80383511)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ニュートリノ |
研究実績の概要 |
ニュートリノの運動方程式を数値的に解くことにより、初期宇宙におけるニュートリノの脱結合過程について研究しました。現在の宇宙でのニュートリノ運動量スペクトルを将来的には明らかにすることを念頭に置き、質量基底およびフレーバー基底の両方の基底でのニュートリノスペクトルの歪みの進化を計算しました。さらに、ニュートリノの有効世代数Neffの正確な測定の準備として、関連する運動方程式に対するO(e^3)までのQED有限温度補正による影響も初めて取り入れました。具体的には、両方の基底でニュートリノ密度行列の運動量依存の運動方程式を解きました。ここで、ニュートリノと電子、また、それらの反粒子を含むプロセスの完全な衝突項を考慮する一方、ニュートリノの自己相互作用に関する非対角部分は無視しました。その結果、ニュートリノの有効世代数がNeff = 3.044で与えられることを示しました。ニュートリノ振動は、電子-陽電子対のニュートリノへの消滅を促進するため、ニュートリノ振動のないNeffと比較して約0.0005だけNeffを増加させます。一方、O(e^3)までのQED補正の影響はNeffを減少させます。その差は、O(e^2)までのQED補正によるNeffと比較して約0.001です。ΛCDMモデルのPlanckデータ分析によるNeffの現在の制限は、95%CLでNeff = 2.99^{+0.34}_{-0.33}であり、誤差の範囲内で我々の予言Neff = 3.044と一致しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量基底およびフレーバー基底の両方の基底でのニュートリノスペクトルの歪みの進化を計算し、ニュートリノの有効世代数Neffのより正確な予言が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた、初期宇宙でのニュートリノスペクトルの歪みの効果を、さらに現在まで進化させること。また、ニュートリノ背景放射の非等方性の研究も進めること。
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次年度使用額が生じた理由 |
得られた成果について現在論文を執筆中なため、今年度は成果報告のための研究会参加等を控えました。また、ニュートリノ背景放射の非等方性の研究に必要な数値計算を行う段階でないため計算機の購入も控え、また、ポスドク研究員もまだ雇用しませんでした。次年度以降に、論文を投稿後成果発表を行うと共に、必要があれば数値計算への実装化のために計算機を購入し、ポスドク研究員を雇用する予定です。
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