研究期間全体を通じて、ニュートリノの運動方程式を数値的に解くことにより、初期宇宙におけるニュートリノの脱結合過程について研究しました。現在の宇宙でのニュートリノ運動量スペクトルを将来的には明らかにすることを念頭に置き、質量基底およびフレーバー基底の両方の基底でのニュートリノスペクトルの歪みの進化を計算し、ニュートリノの有効世代数がNeff =3.044で与えられることを示しました。また、研究期間全体を通じて、トリチウムによるニュートリノ捕獲を利用して、宇宙背景ニュートリノを実際に観測する実験についても考察を行いました。特に、ニュートリノデカップリングや銀河系でのニュートリノクラスタリング等の宇宙論的な効果を含む、各ニュートリノ種毎の正確な捕獲率を評価しました。さらに、ディラック型ニュートリノとマヨラナ型ニュートリノでの捕獲率の違いや、ニュートリノの質量階層が通常型と逆階層型での捕獲率の違い、各ニュートリノ種を検出するために必要なエネルギー分解能、放出された電子のスペクトルを介した宇宙ニュートリノのスペクトルの再構築方法について、特に宇宙ニュートリノ背景放射捕獲実験であるPTOLEMY実験を想定して具体的に考察を行いました。最終年度は、これまでの研究を総括するとともに、これらの研究内容全般に関するレビュー論文の執筆を依頼され、計算過程の細かい点まで詳しく記述したレビュー論文を出版しました。
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