研究課題/領域番号 |
18K18767
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林田 清 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (30222227)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 蛍光X線撮像 / コード化マスク / CMOSピクセル検出器 / X線画像検出器 / X線偏光検出器 / 蛍光X線分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小型のX線発生装置と常温でX線検出可能なCMOSピクセル検出器を用いて、蛍光X線撮像をするシステムを開発することである。原理的に新奇な点は、コード化マスクを使用し、1回の撮影で3次元画像を得る(=様々な距離にピントをあわせた画像を生成できるという意味)ところにある。コード化マスクはX線ガンマ線天文学で多く実用化されており、マスクパターン、像再合成のアルゴリズムなども多くの研究成果がある。しかし、基本的に無限遠の天体を対象にしており、近距離の対象にはそのままでは適用できない。この点を、シミュレーションと可視光を用いた模擬実験で検討するのが今年度の目標その1であった。これに対して、光源の方向分布のかわりに光源位置の分布をトレースするアルゴリズムを考案し、実際に可視光実験で像再合成することに成功した。マスクの製作に関しても、試行錯誤の末、試作用にはレーザー彫刻機を、本番製作用には、レーザー加工をすることに決定した。 技術的側面からみた本研究の新しい点は、可視光科学計測用にデザインされたCMOSピクセル検出器をX線検出に流用したことである。我々は、昨年度までの実験でピクセルサイズ4.25ミクロン、15MピクセルのCMOSを使用し、室温でX線光子検出に成功していた。本研究でもそれを用いる予定でいたが、2.5ミクロン、25MピクセルのCMOSが入手可能となり、これを導入した。結果的に、X線検出性能がより優れていることを見出した。X線のエネルギー検出のみならず、X線偏光検出能力をもつことも実験的に確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
可視光用CMOS検出器については、当初想定していた4.25ミクロン、15Mピクセルの素子をおきかえる形で、2.5ミクロン、25Mピクセルの素子を使用した。結果的に、エネルギー分解能、スペクトルレスポンス、X線偏光検出、(PCとのインターフェースなど)取り扱いの容易さの点で、優れた性能であることを見出した。この点は当初の想定以上の進展である。像再合成のアルゴリズムの開発、マスクの製作法の確立、可視光での像再合成の成功という点は当初の計画通りである。X線を物体に照射し、このCMOS検出器で蛍光X線スペクトルを取得するところまでは到達した点も、計画通りである。ただし、X線像の撮影と再合成は次年度となった。以上を総合して、順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
方法は確立し、当初目的の蛍光X線の3次元撮像を実験する装置の準備も完了している。このまま、実験をすすめ、最適化を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コード化マスクの製作が当初の予定より時間がかかり、かつ、試行錯誤が必要であったため、X線撮像実験が次年度にもち越した。
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