本研究は、コード化マスクとX線撮像分光可能なピクセル検出器を組み合わせ、3次元の蛍光X線画像を撮影する、超小型装置の開発を目的に開始した。X線撮像分光可能なピクセル検出器としては、従来、X線CCDが用いられてきた。しかし、X線光子1個1個のエネルギー測定を実現するためには、-100度程度に素子冷却する必要があり、冷却および真空装置も含めてて、超小型の装置としするのは難しかった。そこで、我々が着目したのが、可視光用途に設計されたCMOSピクセル検出器の流用である。本研究において、最新の科学計測用CMOSピクセル検出器を入手し動作試験したところ、常温大気圧でX線光子検出できることがわった。最小ピクセルサイズ、2.5ミクロンの素子では、5.9keVのX線に対して、170eVというエネルギー分解能でX線光子検出できることを示したばかりか、X線偏光検出性能もあることを実証した。このようなCMOS検出器を用い、超小型のX線発生装置からのX線を試料(金属板を張り合わせたもの)に照射、まずは、ピンホールを使用してX線撮像分光を行った。配置した鉄板と銅板からの蛍光X線をイメージとして撮影することに成功した。位置分解能は、拡大率にもよるが1mm程度であった。その後、コード化マスクを製作、マスクパターンに対応する蛍光X線イメージを撮影するところまで成功している。像合成の方法もシミュレーションデータ確立し、両者を統合したシステムとして動作を最適化する途中までが、本研究期間内の達成となる。ただし、本研究の期間内に、システムを一部変更し、X線タルボ緩衝効果を利用することで、X線の超高位置分解能撮像に利用できることに気が付き、X線撮影の新たな原理として発展していることも追記しておきたい。
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