研究課題/領域番号 |
18K18777
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 浩晃 北海道大学, 理学研究院, 教授 (30301930)
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研究分担者 |
柴田 智郎 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80446369)
高橋 良 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部地質研究所, 主査 (30446372)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ヘリウム同位体 / ヘリウムガスサンプラー / 地殻流体 |
研究実績の概要 |
ヘリウムを容易にサンプリングできる浸透膜と銅管とを組み合わせたサンプラーの試作を開始した。浸透膜として6×8mmのシリコンチューブを、銅管として外径6.35mm×肉厚0.8mmの配管用銅管を用いた。サンプラーに入ったヘリウムが再び浸透膜を通して外に出ないように銅管をかしめるクランプ(締め具)を用いた。クランプを用いて銅管を完全に固くかしめるため、クランプを固定する土台を設計・製作し、それを市販のバイスに挟み、電動ドリルを用いることで容易に銅管をかしめることが可能となった。 このサンプラーを水中に数日間放置すること溶存しているガスは浸透膜を通してサンプラーに集められる。ある程度の深さにサンプラーを設置すると浸透膜が水圧により潰れるため、ガラスビーズを封入して、水圧に耐えるようにした。京都大学理学研究科附属地球熱学研究施設にある深さ300mの実験温泉井戸に平成30年7月24日-27日の3日間、本サンプラーを設置した。本井戸の深部は温度が100℃を超える。引き上げた浸透膜は変色しているものの、劣化して破損することはなかった。このサンプルを分析したところ、ヘリウム以外に、ネオン、窒素、CO2などが浸透していることが明らかになった。ヘリウムリークディテクタとしてコンパクト型ガス分析システムC-70を購入し、ヘリウムなどのガスを分析ができるようにした。今後、浸透膜の種類による浸透試験、密封試験を行う予定である。また、酸性の温泉(pH3)、中性の温泉(pH6.5)でも試験観測を実施したが、サンプラーの劣化は見られなかった。 平成30年北海道胆振東部地震に関する地殻流体に関する現地調査を実施した。地震時に水位が変化した井戸が確認された。また、震源周辺の温泉6か所でガスのサンプリングを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘリウムガスサンプラーの試作を開始し、浸透膜を通じてガスを導入し銅管に封入する機構をもったサンプラーを製作し、様々な温度や酸性度の温泉で実地試験を行うことが出来た。これまで、サンプル後の密封作業で困難が生じていたが、サンプルが入った銅管を固定し、バイスと電動ドリルを用いることで容易に高トルクで銅管を密閉できる目途がついた。サンプリングしたガスの分析も実施し、ヘリウムがサンプリングされていることが確認できた。また、平成30年9月に発生した北海道胆振東部地震に関する地殻流体調査を実施することが出来た。以上のように、当初の計画通りに研究は進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
異なる種類やメーカーの浸透膜を用いてヘリウムサンプラーを試作し、それぞれのサンプリング特性を検討する。試作したヘリウムサンプラーを用いて、活断層や火山地帯での試験サンプリングを引き続き実施する。ガスリークデテクターを用いて、封印されたサンプラーの長期保存特性について検討を始める。平成30年北海道胆振東部地震時の地下水変化や湧水のガス成分変化について引き続き検討を実施する。
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