研究実績の概要 |
地球生命の起源と進化の問題を考える上で、過去の初期地球を想定し、どのような環境において特定の有機分子が濃縮や化学進化を経て現在の生命の基礎に繋がっていったかを考えることは非常に重要である。生命システムの中心にはDNA/RNA、タンパク質といった高分子(ポリマー)が遺伝情報の伝達と触媒反応に関わっているが、これらの生体関連ポリマーは水中において熱力学的に合成が困難であることから、今回我々は単分子濃縮とポリマー重合が起きうる新しい反応場として深海熱水系近傍に溜まるCO2流体(液体/超臨界)の疎水的環境に着目した。 地球化学モデリングにより酸性の冥王代海洋に溶けこんだCO2をソースとした多量の流体(液体あるいは超臨界状態)の存在が示唆されたことから、学生RAを中心に実験室内で専用耐圧容器を作成改良し、途中リーク等の問題はあったが液体CO2と海水相の2層構造を再現することに成功した。そこで最初の環境模擬実験として、海水中の5種類のイオン(Cl-, Na+, Mg2+, K+, Ca2+)の液体CO2への分配率を測定する系を立ち上げた。今後は研究実施計画に基づき、アミノ酸等の有機物の分布の測定に移行する予定である。また同時に初期地球のCO2流体のアナログとして沖縄沖海底より天然のCO2流体サンプリングし、溶存している有機分子の種類と分布をマトリックス支援レーザー脱離イオン化分析装置(MALDI-MS)で測定した結果、中性脂質と思われる分子群を検出した。
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