研究課題/領域番号 |
18K18784
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
高田 守昌 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (50377222)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | 氷床コア / 詳細解析 / 化学イオン成分 |
研究実績の概要 |
氷床コア中に含まれる化学イオン成分を高い深度方向の分解能で分析するためには、氷試料の融解から分析までの全てを緻密に制御する融解分析システムが必要でありこの開発を行っている。このシステムは、氷試料の融解部、融解試料の送液および一時貯蔵の送液部、融解試料の分析部から構成される。融解部の開発と送液部との連動が本研究の鍵となることから、本年度はこのうちの間欠的融解が可能な融解部の開発を行った。 まず、ペルチェ素子を熱源に利用した小型の融解部の試作機を作成し、氷試料の融解テストを実施した。ペルチェに一定の加熱電力を与えると氷試料はほぼ一定の速度で融解し、冷却電力を与えると氷試料の融解は直ちに停止した。このため、融解制御の見通しを得た。また、間欠的な融解の繰り返しには、融解液を確実に融解部から排除する必要があることも分かった。そこで、従来の融解装置と同じ35mm試料サイズで融解装置を作成した。また、緻密な融解制御を行うため、ペルチェ素子へ印加する電源出力と極性、液送ポンプの流量および回転開始と停止、氷試料の長さをモニタする変位計を、PCで一元管理できるソフト開発進めた。これらの融解部で、送液ポンプが制御しやすい流量となるよう、氷試料の2mmの長さを1分程度で融解するペルチェ素子への印加条件を調査した。そして、融解直後にペルチェ素子への印加の極性を変えることで、融解面を急冷状態とすることにより氷試料の融解を数秒間で停止することができ、精度良い融解制御が可能となった。これにより、融解の目標長さ±0.1mmでの融解制御が行える見込みとなった。別途、急冷方法として液体窒素を用いた手法についても検討を行ったが、応答が悪いため採用しないこととした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
融解分析システムの完成の鍵となる、氷試料の融解制御は予定していた方法で精度良く可能な見通しがついた。融解部に問題点が見つかっているが、洗出しとその対策を見通しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
融解分析システムを完成させ、氷床コアの化学イオン成分の超高分解能分析による古気候環境の年々変動の探究を目指す。融解分析システムは、分析部は実績があり、融解部は融解制御が行える見込みとなったため、融解部と送液部の連動が最後の鍵となる。融解液は分析試料と廃液に分離し送液するため、氷試料の融解速度に応じて送液ポンプ流量を緻密に制御する方法を確立する。また、間欠的な融解のため、急冷や待機時に凍結による送液管路の閉塞や氷試料と融解部との凍着が生じる場合があるため対策を行う。融解分析システムの完成後は、分析と安定性評価のため人工試料によるテストを実施し、実際の氷床コア試料の分析を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
融解部の開発は、試作を重ねる必要があると考えていたが、簡便な小型機を自作し動作確認と予備実験を行なったことで、本来のスケールの融解制御は初号機で比較的良好に動作した。また、融解制御のためのコントローラは自作し、安定化電源は必要な電力量が不明であったため他機関より一時借用した。これらにより節約できたことが残額が生じた原因である。前述の通り、液送部との兼合いで、融解部の改良や見直しの必要も出てくるので、今後そちらの物品購入に充てる。また、一時借用品は返却する必要があり使用電力量が分かったので購入する。情報収集のため学会参加の出張を予定していたが、地震のため中止となった為、旅費は使用しなかった。
|