研究課題/領域番号 |
18K18788
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大内 智博 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 講師 (60570504)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 深発地震 / カンラン石 / 微小破壊音 / 相転移 |
研究実績の概要 |
本年度では、深発地震発生領域の温度圧力条件下(800-1200℃、13-18 GPa)にてカンラン石の一軸圧縮破壊実験を行う際に用いる、微小破壊音(AE)を測定するためのシステムの開発を行った。そのような高圧力下における試料サイズは微小である(直径1mm、長さ1.2mmの円柱状)ため、試料から発生されるAEは非常に微弱なものとなる。そのような微弱なAEを検出するため、ヘッドアンプ搭載型のAEセンサを世界に先駆けて超高圧実験に適用することにより、通常ではノイズと区別のつかない微弱なAE信号を高シグナル/ノイズ比で検出することを試みた。技術検証試験として、スラブ深部条件下の温度圧力条件下(13-17 GPa, 800-1000℃)にてカンラン岩の一軸圧縮試験をSPring-8にて行った。比較的低温(800℃)では、カンラン岩の半脆性流動が進行し、マイクロクラックの形成に伴うAEの検出に成功したほか、13GPa程度の相転移が進行しにくい条件下では断層形成に至り、かつ多数のAE(深発地震に相当)を検出することに世界で初めて成功した。 また本年度では、自然地震の震源決定で一般的に用いられている、相対震源決定アルゴリズム(Waldhauser & Ellsworth, 2000)をAE震源決定に適用するためのプログラム作成を行った。これは、雷(連携研究者)の協力のもとに行った。プログラム作成は概ね終了しており、注水試験による誘発地震データを用いたプログラム動作テストを行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
13-17 GPaのスラブ深部条件下における岩石の破壊実験はこれまで例が無い上、そのような極限条件下において直径1mm程度の微細な試料から発生するAEの検出に成功したのは本研究が世界初となる。更には、そのAEの震源位置が試料内に位置していることも測定結果から確認できており(震源位置決定誤差は±1mm未満)、本研究で開発してきた「マイクロAE測定システム」が適切に機能していることが証明された。 高圧下におけるAE測定技術は欧米にて発達した技術であるため、深発地震発生の素過程に関する研究分野をリードしてきたのはSchubnel(Schubnel et al., 2013 Science)をはじめとした欧米の研究グループであった。そのため研究代表者をはじめとした日本の高圧下AE測定技術は欧米と比較して遅れている部分があった。しかしヘッドアンプ搭載型のAEセンサを用いたAE測定システムの開発に成功したことによって、欧米の研究グループの技術力を部分的には超えることができた。今回開発に成功した技術によって、深発地震発生メカニズムの解明を世界に先駆けて取り組める体制が確立された。以上の成果より、本年度の達成度はおおむね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度には「スラブ深部条件下におけるカンラン岩の一軸圧縮試験」をSPring-8にて本格的に行う予定である。SPring-8の実験では、ヘッドアンプ搭載型のAEセンサを用いたAE測定システムを用いる。またAE震源位置の精密決定に必要なプログラムの作成を来年度中には完了させることによって、SPring-8にて得られた結果の解析に適用できるようにすることを目指す。得られた成果はとりまとめの上、国際誌にて公表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の遂行に必要な物品等のみを購入した結果、それだけでは有効に活用するには難しい、ごく少額の残金が生じた。その残金を次年度使用額として次年度予算と合算して用いることにより、計画に則して有効に活用する。
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