研究課題/領域番号 |
18K18789
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山本 裕二 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (00452699)
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研究分担者 |
諸野 祐樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, グループリーダー代理 (30421845)
山崎 俊嗣 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80344125)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 磁性細菌 / 残留磁化 / 古地磁気強度 |
研究実績の概要 |
微好気性磁性細菌 Magnetospirillum magnetotacticum MS-1 の分譲を受けて大量培養し,密度勾配遠心分離法(密度分離)によって固定済みの磁性細菌を回収した.これらを透過型電子顕微鏡で観察したところ,長さ 3-8 μm ×幅 0.3-0.5 μm の細胞が多数観察できた.細胞外には一切の磁性鉱物(培地由来など)は確認されず,細胞内に粒径 40-50 nmの自形のマグネタイト粒子を直鎖状に形成している個体が確認できた.堆積物の形成直後のごく初期においてNRMを獲得するプロセスを模擬した実験を行い,異なる強度の外部磁場中(0-100 μT)で磁気測定用試料を作製した.このようにして獲得させたNRMに対して段階交流消磁を行い,さらにそれぞれ一定の磁場下で,非履歴性残留磁化(ARM)と等温残留磁化(IRM)の着磁と段階交流消磁も行うことで,これらの残留磁化の性質を調べた. 獲得されるNRM方位は外部磁場の方向とよく一致し,NRM強度は外部磁場強度の増加に対してランジュバン関数的に増加した.全ての試料について,NRMの段階交流消磁後に,ARMおよびIRMを着磁したところ,試料作製時の外部磁場方向と強度に応じて残留磁化異方性の影響が認められた. 古地磁気強度相対値の指標として用いられる NRM/ARM 比および NRM/IRM 比は,試料作製時の外部磁場強度の増加に対してランジュバン関数的に増加した.また,試料作製時の外部磁場方向と強度に応じて残留磁化異方性の影響が認められた.今回の作製試料のように,磁性細菌の細胞が特定方向に非常に効率よく配向している場合は,残留磁化異方性の影響について慎重に考慮する必要があることが示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一種類に留まるものの、磁性細菌の大量培養と細胞のみの密度分離に成功し、これらの細胞を用いた磁気測定用試料の作成と獲得残留磁化の分析を順調に行うことができているため。中途の研究成果も学会発表できている。
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今後の研究の推進方策 |
磁性細菌 Magnetospirillum magnetotacticum MS-1 の純粋大量培養と密度分離の方法をより詳細に検討し,細胞内にマグネタイトを形成している個体の割合(マグネタイト形成率)を向上させる.マグネタイト形成率を高めた細胞群を対象にNRM獲得プロセスの模擬実験を行い,獲得残留磁化の各種性質を解明する.可能な範囲で,MS-1以外の磁性細菌についても同様の取り組みを進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
おもに,培養する磁性細菌種を一種類に絞ったため,未使用額が生じた.MS-1の再分譲,および,他種の磁性細菌の分譲と培養・磁気測定用試料作製環境の整備のために使用する予定である.
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