研究課題/領域番号 |
18K18792
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 陽 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40532271)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 地球惑星探査 / 海底探査 / 生存圏 / 乾燥耐性 |
研究実績の概要 |
人類は、進化とともにその活動圏を拡げてきた。現代、地球上の陸地はほぼ探索が完了したといえるが、将来は海や宇宙に活動範囲を拡げていくであろう。ただし、それには地形や生態系などの探索が不可欠になるが、従来法であるリモート探索は情報の精度や質に限界があり、探索機は広範囲をカバーするには膨大な数とコストがかかる。そこで本研究では、根本的に発想を変え、生物に機械を組み込んだハイブリッドロボットを使った探索を実証する。まず比較的容易な(1)海の探索法を検証し、その知見を活用し、(2)宇宙についても挑戦することを目的とした。 当該年度は、昨年度までに開発した、宇宙でも生存可能な虫、すなわちネムリユスリカ幼虫が蘇生したときの動きを捉えるマイクロデバイスとその蘇生時の温度や溶液化学組成が変化したときにどのように動きが変わるかの検証結果にもとづき、これまでのデータが妥当かどうか、シミュレーションや計算との比較検証を行った。ネムリユスリカの表面電位を計測し、この結果をもとに電場シミュレーションを行った結果、確かに櫛歯電極上でネムリユスリカが振動した場合、電位が発生し、その値は実験値とほぼ変わらないことを確認した。また、ネムリユスリカとデバイス床面からの距離が近づくほど発生する電力が大きくなることも確認できた。今後は、このデバイスが実際にどのような状況や場所で適用できるか検討を進め、実際に探索等の目的に用いられることを示していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、前年度に実証し、さらに環境センシングにも使えることを示したネムリユスリカの動きを検知するためのマイクロデバイスについて、ネムリユスリカの表面電位のような新たなデータも参照しながらシミュレーションを行い、捉えた信号がノイズ等ではなく、原理的にも正しく作動していることが確認でき、学術的な観点からもデバイスの有効性を裏付けることができたといえる。これらの結果については現在、査読付きの国際学術誌原著論文にまとめて投稿中であり、近い将来に成果発表が見込めることから、今後の実地実験のための基礎を確立できたといえる。以上のような状況から、本年度については十分に当初の計画を達成できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ネムリユスリカデバイスを用いた環境センシングデバイスについて、どのような状況で使えるのかより具体的な検証を行うとともに、機械学習の適用により、マルチパラメータの同時取得が可能かどうかについても検討を行う。これにより、既存のシステムに比べてどの程度の優位性があるか、技術的な進歩性があるかといったことを明らかにする。さらに、これまでの成果を論文発表し、分野外の研究者も含めてデバイスの応用可能性について議論を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、当初想定よりもシミュレーションが複雑であったため時間を要し。消耗品等が必要な実験量としてはやや少なくなったため。該当分は翌年度の実験に回されるため、全体として研究の進捗には影響しないが、本年度については研究費の未使用分が発生した。
未使用分は、物品費としてシビレエイやネムリユスリカ他、試薬や実験器具などの消耗品として用いることを計画している。
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