研究課題/領域番号 |
18K18793
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 淳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (60344199)
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研究分担者 |
黒柳 あずみ 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (20536510)
井口 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50547502)
大野 宗祐 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (80432631)
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50153838)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 海洋酸性化 / 飼育実験 / 石灰化 |
研究実績の概要 |
白亜紀末(K/Pg)境界の生物絶滅現象については、石灰質殻を持つ円石藻類には大きな絶滅が見られたが、珪藻のグループへの影響は少なかったと考えられている。これは「 衝突の冬」による光合成阻害説よりも「硫酸雨による海洋酸性化説」と調和的である。この「硫酸雨による海洋酸性化説」は、海水の酸性度予 測の定量性が高く、時間スケールも数ヶ月程度と短く、挑戦的研究の研究期間内に生物飼育培養実験手法による検証が可能であると考えて、本研究課題を申請した。 昨年度までにサンゴ(ミドリイシ類の初期ポリプ)と有孔虫(サンゴ礁棲底生種)を対象にした予察的な飼育実験系を構築して、予備的な検討を実施した。今年度は、硫酸添加海水の調製法について、いくつかの改善を行い、海水のバブリングにより目的のpHを迅速に得られるようにした。この操作により実験の再現性が向上すると考えられる。初期ポリプについても、ガラスベースディッシュ1枚あたり約10個体を用いて、ポリプの重なりを防止するなどの改善を進めた。初期ポリプの実験では、過年度に実施した実験の繰り返し実験として、硫酸添加によりpHを8.0 (対照区、あられ石飽和度3.0)から7.5 (あられ石飽和度0.3)に至る5つの実験区を設定して暴露実験を実施し、初期ポリプの 面積及び重量を計測した。また、次年度に予定している白亜紀の海水組成を模した高アルカリ度海水の調整方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は2018年度~2019年度の2年計画で研究に着手したが、2019年度は天候その他の影響によりサンゴ産卵現象のタイミングを逃してポリプ実験を実施すること ができず、1年間の延長を申請した。ところが、2020年度については新型コロナ感染症の流行の影響を大きく受けて十分な実験を実施することができず、再度の延長を申請した。しかし、新型コロナ感染症の状況は2021年度も厳しく、サンゴ産卵期に沖縄県に緊急事態宣言が発出される状況の中で、課題代表者は出張が実施できなかったものの、研究協力者の助力を得て、最低限のポリプ試料を確保し、小規模な実験を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
特定の季節にしか得られないサンゴ幼生を用いての実験を計画しているため、諸事情により実験機会を逃してしまう可能性については、当初から対応を考えて臨むべきであったが、今般の新型コロナ感染症の感染拡大による影響は深刻で、複数年に渡り、研究計画にも大きな影響が生じてしまった。通常の5-6月期に加えて、8月期に産卵をするサンゴ種も対象にすること、さらに底生有孔虫についても複数回の試料採取を目指して、新たに研究協力者の助力を仰ぐなどして、目標の実験を実現したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間を当初計画の平成30年度~ 令和元年度から、平成30年度~ 令和3年度へ、そして今回さらに平成30年度~ 令和4年度へと変更・延長の申請をした。今回の研究期間延長は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、予定していた実験・調査の一部を見送りまたは短縮して実施することとなり、データ取得が不十分であったためである。延長期間中には、通常の5-6月期に加えて、8月期に産卵をするサンゴ種も対象にすること、さらに底生有孔虫についても複数回の試料採取を目指して新たに研究協力者の助力を仰ぐなどして、目標の実験実施を計画している。
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