研究課題/領域番号 |
18K18796
|
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
井尻 暁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (70374212)
|
研究分担者 |
山口 耕生 東邦大学, 理学部, 准教授 (00359209)
奥村 知世 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任助教 (90750000)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | イメージング質量分析 / シアノバクテリア / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究は、地球大気酸素分圧上昇のきっかけとなった、太古代のシアノバクテリアの発生時期を特定しその環境を明らかにすることを最終的な目的とする。最小3.5μmの高空間分解能で有機分子の分布画像を得ることができる「イメージング質量顕微鏡」を用いて、頁岩やストロマトライトなどの岩石試料に含まれるバクテリアや真核生物の指標となる有機分子(バイオマーカー)の二次元分布をイメージングする手法を確立する。令和元年度は、有機物の標準試料である2α+2β-,17α(H)-21β(H)-2-Methylhopaneの検出を確認した。400pmol/10μLのMeOH溶液を作成し、極微量をシリンジを用いて岩石薄片に局所的に塗布し、iMScopeで測定した。その結果、塗布した部分にのみに検出されたm/z = 368.4が2-メチルホパン由来のフラグメントピークであることがわかり、他にもm/z = 369.4、340.3、312.3を2-メチルホパン由来のフラグメントイオンとして検出することができた。これらはGC/MS分析で得られるメインのフラグメントイオンとは異なるため、標準試料分析の重要性を確かめることができた。 次に、岩石試料として豪Pilbara地方の約27億年前のJeerinah層の黒色頁岩と同Tumbiana層の含ストロマトライト炭酸塩岩の分析を行った。鏡面研摩の岩石薄片を作成し、薄片部分を剥離し、ステンレス板に張り付け、iMScopeで測定した。その結果、15試料中5試料で、m/z = 368.4とその他の2-メチルホパン由来のフラグメントイオンが、堆積構造に沿った局所的な分布を示していることを初めて確認することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度は、バイオマーカーの標準試料のイメージング分析を行い、イメージング質量分析では通常のGC/MSでの分析とは異なるフラグメントイオンが生成することを確認することができ、研究を飛躍的に進めることができた。 一方で、今年度は岩石試料のバイオマーカーイメージングの分析条件の最適化を行うために現世試料のストロマトライトを用いて基礎実験を行う予定であったが、こちらには着手できなかったため、総合的にみてやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、太古代の試料から、2-メチルホパン由来のフラグメントイオンの分布を確認することができた。今後はこのバイオマーカーが2次的な混入ではないことを確認するために、現世試料での試料作成方法や分析条件を再確認し、現世試料中のバイオマーカー分布を調べる。また、太古代の試料についても、岩脈や続成作用で形成した自生鉱物等に着目し、堆積構造に依存するバイオマーカーの2次元分布の測定例を増やし、太古代のシアノバクテリアの存在についてより確かな証拠を集める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた、現世試料の分析に着手できず、分析に必要な標準試薬を選定、購入できなかったこと、さらに成果を学会などで発表することができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、試薬の購入および、学会発表の参加費、旅費に使用する。
|