研究課題/領域番号 |
18K18800
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松坂 壮太 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30334171)
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研究分担者 |
森田 昇 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30239660)
比田井 洋史 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (60313334)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 固体イオン交換 / 化学強化ガラス / 金属析出 / 亀裂 / 割断 |
研究実績の概要 |
化学強化ガラスは傷(亀裂)に強いという性質から電子機器等のカバーガラスとして多用されているが,表面強度の向上に伴い,機械的割断による分割が困難となり生産工程上の大きな問題となっている.本研究では,化学強化ガラスが組成にアルカリ金属イオンを含有するという点に注目し,固体イオン交換法によってガラス内部に微細金属析出物を形成する.この析出物を起点に生じる亀裂を所望の形状に進展させることによって,化学強化ガラスを高速・高品質に割断できる新規加工プロセスを開発することを目的とした.この目標を達成するため,平成30年度は主として以下の3点に関する研究開発を実施した. (1) 未強化のソーダ石灰ガラスに対して金を添加・析出させ,分割後の破断面の詳細な観察を行った結果,破断面に金の生成が認められた.しかしこれは,銀の添加・析出時に見られる電気化学的な析出現象とは異なり,融解やエレクトロマイグレーションといった別のメカニズムによって形成されたものと考えられる. (2) 本実験条件の範囲内では,ガラスに対する金の添加深さは1ミクロン以下と,ごくわずかであるにもかかわらず,基板の分割には添加プロセスが必須であることが分かった.これは添加プロセスで生じる金とガラス基板の接合部が,析出プロセスでの亀裂形成に大きく影響することを示唆している. (3) 化学強化ガラスに対して金を添加・析出させた結果,分割位置の制御には至っていないものの,多数の小片への破壊・粉砕は認められず,数片への分割が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
未強化のソーダ石灰ガラスに対する金の添加・析出実験により,亀裂に生成に必要な実験条件や生成メカニズムが概ね明らかとなった.またこれらの知見は化学強化ガラスの分割に対しても有効であると考えられ,基板が粉砕されることなく分割できる見通しを得た.一方,現時点では亀裂の起点や進展方向の制御には至っておらず,添加金属の供給方法の最適化が必要であることから,「やや遅れている」との自己評価とした.なお現在,本経費によりイオン交換処理中の基板を直接,高速度観察可能なチャンバ―を製作しており,本装置が稼働すれば,亀裂進展挙動の把握・制御に大きく貢献できるものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は以下の方針に沿って研究を進める予定である. (1) 加工中の亀裂生成・進展挙動の観察結果から,亀裂の起点や深さを明確化する.また,金の供給方法(線幅,膜厚,連続的或いはミシン目状に形成等)を変化させることにより,亀裂生成位置や進展方向の制御を可能とする. (2) 割断面の品質(割れ・欠けの発生,断面におけるテーパ化の有無等)の評価を行い,析出物の形状や密度との関係を明らかにする. (3) 組成や強化深さの異なる化学強化ガラスに対して本手法を適用した割断を行い,個々のガラスの特性に応じた分離手法を確立する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に購入を予定していた金属ナノインク用インクジェットプリンタは,数カ月の試用・評価後に購入可否の判断が可能となったため,現在,性能評価中である.その結果,十分に満足できる仕様であれば,次年度に購入する計画であるが,要求性能を満たさない場合は,別メーカー品の購入やサンプル提供(有償)への切替えを含めて検討する.
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