研究課題/領域番号 |
18K18804
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
中本 圭一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90379339)
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研究分担者 |
笹原 弘之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00205882)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 工程設計 / フライス加工 / トポロジー最適化 / 複雑形状部品加工 |
研究実績の概要 |
高付加価値な工作物には,航空機部品のように薄肉で複雑な3次元形状が増えており,素材から最終形状に至る加工途中に工作物の剛性が大きく変化する.このとき生じる工作物の変位は,加工精度や工具寿命に大きな影響を与えるため,これを最小化する工程設計を施す必要がある.この自由度の高い切削加工の工程設計を標準化して複雑形状加工を高精度・高効率化するために,まずトポロジー最適化に基づいて支えを含めた加工途中の工作物形状を算出する手法を確立することを目指した. 薄肉複雑形状の航空機部品を目標として,3次元形状の複雑な工作物にトポロジー最適化を適用するプログラムを作成し,荷重の位置や大きさ,方向に応じて工作物の支えも含めた加工途中の最適な工作物形状を算出できるようにした.また,目的関数を剛性最大化あるいは固有振動数最大化とした場合の工作物形状の差異を確認し,算出された工作物形状の妥当性を検証した. さらに,トポロジー最適化の計算で必要となる工作物への荷重とそれに伴う加工誤差について,推定される切削力に基づいて予測した.切削加工の中でも一般的なエンドミル工具によるフライス加工を対象とし,回転する工具が切り取る瞬間的な切削断面積に比例する切削係数法を用いて切削力を推定した.さらに,工具一回転中の平均切削断面積及び切削係数の関係から,工作物の変形に起因した加工誤差に影響を与える平均切削力が計算できるため,これを工作物に加わる荷重として設定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,加工途中の工作物にトポロジー最適化を適用し,工作物の除去すべき体積を徐々に減じていくことで,切削加工工程の途中段階で必要となる支えを含めた最適な工作物形状を算出することができたため. また,目的関数を剛性最大化あるいは固有振動数最大化とした場合の工作物形状の差異を確認し,算出された工作物形状の妥当性を検証したため.
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今後の研究の推進方策 |
素材から最終形状に至る過程の工作物形状をトポロジー最適化により断続的に算出し,剛性が大きく変化する加工途中の工作物の変位を最小化することで,薄肉複雑形状の加工精度を確保する.このとき,トポロジー最適化で得られた工作物形状や前提となる工作物への荷重を,工程設計において工具や加工条件,工具経路などへ適切に変換して切削加工工程で具体化することが不可欠である.そこで,非常に多くの組合せが発生する工程設計について,トポロジー最適化で予め設定した荷重の大きさや方向を満足し,加工精度を確保しつつ最大の効率が得られるように工具や加工条件,工具経路などを選択することで技能の体系化の端緒とする.さらに,これまで取り組んできた多軸制御工作機械に向けた工具姿勢の決定や工具経路生成の知見も加えて,薄肉複雑形状に対しても高精度な切削加工を効率的に達成する実用性の高いCAMシステムを開発する.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった有限要素解析ソフトウェアが学内設備を利用できたことが主な理由であり,この分の費用で次年度購入予定であったタッチプローブをより高精度なタイプに変更する. タッチプローブは工作物のトポロジー最適化に基づいた工程設計を検証する上で,実際に加工した複雑形状を機上で評価するために用いる.複雑な形状の場合には工作物を傾けなければ測定できないオーバーハング部も有するため,回転機構を持つ5軸制御マシニングセンタ上で加工形状を測定するが,工作物を取り外すことなく機上で測定できれば研究の遂行が円滑になるだけでなく,機上計測で得られた形状情報をフィードバックした切削加工の更なる高度化など,本研究の将来的な発展にも寄与できる.
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