高付加価値な工作物には,航空機部品のように薄肉で複雑な3次元形状が増えており,素材から最終形状に至る加工途中に工作物の剛性が大きく変化する.このとき生じる工作物の変位は,加工精度や工具寿命に大きな影響を与えるため,これを最小化する工程設計を施す必要がある.この自由度の高い切削加工の工程設計を標準化して複雑形状加工を高精度・高効率化するために,まずトポロジー最適化に基づいて支えを含めた加工途中の工作物形状を算出する手法を確立することを目指した. 薄肉複雑形状の航空機部品を目標として,3次元形状の複雑な工作物にトポロジー最適化を適用するプログラムを作成し,荷重の位置や大きさ,方向に応じて工作物の支えも含めた加工途中の最適な工作物形状を算出できるようにした.また,目的関数を剛性最大化あるいは固有振動数最大化とした場合の工作物形状の差異を確認し,算出された工作物形状の妥当性を検証した. さらに,トポロジー最適化の計算で必要となる工作物への荷重とそれに伴う加工誤差について,推定される切削力に基づいて予測した.切削加工の中でも一般的なエンドミル工具によるフライス加工を対象とし,回転する工具が切り取る瞬間的な切削断面積に比例する切削係数法を用いて切削力を推定した. また,トポロジー最適化の計算で用いる設計変数を用いることで,荒加工工程の各加工段階での工作物形状の差である,複数の除去領域の加工順序を決定する妥当性を加工実験で確認した.この結果を基に,トポロジー最適化の計算における収束過程の設計変数を用いて,各加工段階の工作物形状と除去領域の加工順序を同時に決定する手法を提案した.
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