研究課題/領域番号 |
18K18807
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澄川 貴志 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80403989)
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研究分担者 |
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20534259)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 転位 / 欠陥制御 / 繰り返し変形 / ナノ / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
H30年度の研究実績は、以下のように纏めることができる。1. 集束イオンビーム加工装置およびアルゴンイオンミリング装置を用いて単一すべり方位を有するマイクロ銅単結晶試験片(ゲージ部:2 μm×2 μmの正方形断面、10 μmの長さ)を作製し、現有の微小負荷試験装置により走査型電視顕微鏡内でその場観察引張圧縮繰り返し変形試験を実施した。試験片は、1サイクル目から局所にナノレベルの段差を生じ、繰り返し数の増加(~数千サイクル)と共に試験片寸法と同じオーダーの高さの突き出し/入り込みが成長し、大きな形状変化を生じた。その様相は、寸法は異なるものの、マクロ材で観察される突き出し/入り込みに酷似していた。試験後の試験片に対して薄片化を行った後、超高圧透過型電視顕微鏡による内部観察を実施した。試験片内部には、一方向変形では生じない転位の壁構造および転位密度が極めて低い領域が形成されていた。突き出し/入り込み形成領域では、マクロ材で観察される転位のはしご型構造は形成されておらず、他領域(変形量の少ない領域)の構造に似ていることを特定した。詳細な観察の結果、マイクロサイズの材料はマクロ材とは異なる疲労現象を有しており、試験片内に形成された転位壁の形状は、試験片の外形状の影響を強く受けていることを明らかにした。2. 転位動力学解析および分子動力学解析プログラムの整備を行い、繰り返し負荷を与えた解析を実施して、必要な諸条件について確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度の研究計画は、微小試験体に対する引張圧縮繰り返し変形試験および内部観察の実施である。申請時の予定に沿って、マイクロサイズの銅単結晶試験片を作製し、試験を行った。精密な軸調整とチャッキングにより、試験片に引張圧縮負荷を与えることに成功した。所望の観察方向に薄片化を行い、超高圧透過型電視顕微鏡を用いて内部構造を特定した。得られた内部構造(転位構造)は、別途実施した一方向負荷試験のものとは大きく異なっていたことに加え、明らかに試験片の外形状の影響を受けていた。このことは、試験片の境界条件を制御することで、形成される転位構造の形状をされることを示唆している。加えて、次年度実施予定の解析に関してもそのプログラム整備を行った。研究過程において、当初の想定とは異なる幾つかの問題が発生したが、対策を実施し、研究計画を達成した。研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
① 多重すべり方位を有する試験片、粒界を有する試験片および異材界面を有する試験片体の三種類を用意して試験を実施し、複雑な力学環境下で形成される転位の自己組織化構造を明らかにする。 ② 力学解析を行い、複雑化された力学条件下での転位自己組織化構造に及ぼす材料形状と界面の影響、および、その力学的支配因子を明らかにする。 ③ 特定した力学的支配因子を考慮した解析を実施し、所望の転位構造を実現する試験体を設計(結晶方位、試験体形状、粒界の導入等を考慮)する。設計された試験体を実際に作製して実験を行い、透過観察によって所望の自己組織化転位構造形成の可否について検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度は大規模計算装置を導入する予定であったが、プログラム構築と予備検討に関しては、現有の計算機で可能であることがわかった。また、予備検討の際、得られる実験結果をもとに計算装置の構成を変える必要があることがわかったため、次年度実施の実験結果をもとに構成を決定し、導入することとした。
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