研究課題/領域番号 |
18K18819
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊賀 由佳 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (50375119)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 気体性キャビテーション / 溶存気体 / 析出 / テイラー渦 / 油圧作動油 |
研究実績の概要 |
本研究は,来たる水素社会での水素サプライチェーンにおいて,エネルギーコスト低減に直結する水素ポンプの性能を向上するための,革新的数値解析モデルを開発するものである.ポンプではキャビテーションという現象が発生する.キャビテーションとは,液体が加速する場所で圧力が局所的に低下し,飽和蒸気圧を下回ることで主に蒸発により気体が発生する現象で,ポンプを高性能化(小型・高速化)する際にしばしば発生し,性能低下を引き起こしてしまう.このキャビテーションには信頼できる数値解析モデルが存在しないため,実験による性能試験が容易ではない水素ポンプの設計に対して数値解析を用いることもできず,高性能化が難しくなっている. 研究代表者は,現存の全てのキャビテーションモデルに共通する問題点は,発生の閾値を飽和蒸気圧の一定値としているところであると考えた.液体中に溶け込んだ溶存気体の析出による影響によって,キャビテーションの初生が飽和蒸気圧ではないことは実験的に良く知られた事実である.この根本的なモデルの問題を解決すべく,本研究では,実現象での気体発生の動的閾値の定式化を行う. 研究2年目は,前年度の回転同心円筒油中キャビテーション発生実験により得られた析出圧力と円筒回転速度の関係に対し,さらに,減圧速度を変化させ,析出圧力が回転数と減圧速度の双方の影響を受けて変化することを見出した.さらに,それが減圧速度に依存する非平衡領域と,依存しない平衡領域に分けられることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回転同心円筒油中キャビテーション発生実験により,溶存気体析出圧力の動的閾値が流れ場の流速と減圧速度の双方に依存すること,さらにそれが,減圧速度に依存する非平衡領域と,依存しない平衡領域に分けられること,また,平衡領域では流速の変化に対して析出圧力が不連続に変化することを見出した.それらの研究成果を,国際会議2件,和文誌1編で報告でき,研究は概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
溶存気体析出圧力の動的閾値が減圧速度に依存する非平衡領域と,依存しない平衡領域に分けられることを新たに見出したため,今後は,それぞれの領域における流速依存性を調べ,高速流れ場における析出圧力の経験則や理論モデルを構築する.平衡領域においては,実験で得られた析出圧力の流速依存性と,単相流れの数値解析により得られた流れ場の構造の変化(クエット流れ,テイラー渦への遷移,発達したテイラー渦流れ)の関係性について調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新しい発見があり,得られたデータの処理と考察に時間の要したため,予定していた作動流体の粘度を変えた実験は次年度行いたい.
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