研究課題/領域番号 |
18K18825
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土井 謙太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20378798)
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研究分担者 |
川野 聡恭 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00250837)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 分子流体力学 / 自己組織化の臨界現象 / マイクロ・ナノ流動 / 微小電流計測 |
研究実績の概要 |
本研究は,原子・分子の相互作用と自己組織化の視点から流動場形成メカニズムを究明することを目的としている.溶媒に分散する溶質(原子,分子,イオン)の運動により,系全体の流動が誘発されるメカニズムについて,微細構造を観察するとともに理論的考察を深め,現象の本質を明らかにする.離散粒子の運動を非平衡統計力学の枠組みで定式化し,自己組織化臨界現象の観点から秩序形成のメカニズムについて学理の構築を目指す.本研究の結果から,生体現象を模倣するバイオミメティクス,エネルギー変換,新奇な流体駆動原理の創出につながる萌芽的な研究課題に挑戦する.
具体的に,(1)微細加工により作製する100nm幅の金属細線に電子電流を印加し,電流密度に対する電気抵抗の値を計測して線が破断に至るときの電流電圧特性から,電子電流が金属原子の流動を駆動する臨界点を見出す;(2)マイクロ流路を用いて電解質溶液中のイオン電流密度に対する溶媒の流動発生を可視化し,イオン強度と流速および圧力勾配を解析し,それらの関係を明らかにしてイオン電流が溶媒の流動を駆動する臨界点を見出す;(3)ミクロからマクロへの現象の発展を非平衡散逸系における自己組織化臨界現象として定式化する.
平成30年度は,電子線描画装置を用いることにより線幅500nmの線形状を作成し,実験環境を整備した.引き続き,線幅100nmの金属細線を作製し,微小電流計測装置により計測・記録し,エレクトロマイグレーションによる線の破断を電子顕微鏡で観察する.また,マイクロ流路中において駆動される電気流体力学流れについてイオン強度と印加電圧の影響について調べ,流速がイオン濃度に比例することが確かめられたことから,イオン電流が流体に対する巨視的な体積力となることが明らかとなった.さらに,独自の微細加工技術によりマイクロ・ナノ流路を作製し,電気的に駆動される流動現象を可視化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微細加工技術による,100nmオーダの細線を描画することに成功したことから,金属細線の作製が可能となり,エレクトロマイグレーションを計測・評価する環境が整った.計測の実行にまでは至らなかったが,引き続き,実験を行うことが可能となった.電気流体力学流れについては,さまざまな流路形状において流動場の生成が可能となった.流速に対するイオン濃度と印加電圧の相関も明らかにされたことから,引き続きその臨界点を探ることは現実的に可能と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,電子線描画装置を用いて100nm幅の金属細線の作製を目指すとともに微小電流計測を実行する.細線破断時の応答特性と破断後の電子顕微鏡像から臨界現象に対する理論モデルの構築を行う.印加電圧に対する微小電流応答と細線の破断時間から現象の細部を推察する.一方,マイクロ・ナノ流路における電気流体力学流れについても,流動場形成のダイナミクスをイオン電流の応答特性に注目して自己組織化臨界現象の観点からモデル化する.臨界点を境界として微視的スケールから巨視的スケールの現象へと発展する様子を究明する.
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