研究課題/領域番号 |
18K18829
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
岡 和彦 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (00194324)
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研究分担者 |
陳 暁帥 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (40812277)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | リング状光格子 / 軸対称偏光素子 / 光駆動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、マイクロマシンの部品などの微小物体を顕微鏡下で光により回転駆動する新たな方法について、その基本特性を実験と理論の両面から明らかにすることにある。我々が独自に発案したこの光駆動法では、軸対称な構造を持つ偏光素子によって生成されたリング状光格子と呼ばれる特殊なレーザー光を用いる。このリング状光格子には、断面に環状に配置された複数の光スポットが含まれる。さらにこの光格子は、電気光学変調器を使ったレーザー光の偏光変調を用いて、中心軸のまわりに自在に回転させることができる。この光を顕微鏡下で微小物体に照射すると、環状の光スポットによってこの部品を多点で同時に捕捉することができる。この状態でリング状光格子を光軸のまわりに回転させれば、その微小物体も同時に回転できる。本研究で提案するこの方法を使えば、微小物体の回転方向、回転速度、回転加速度などを様々に、かつ容易に制御できるようになる。さらには長時間所望の角度で静止させることも可能なので、あたかもサーボモーターのような精密位置決めに用いることもできる。 本年度は、この原理に基づく微小物体の回転制御の安定性の改善に関して、光学系の基本特性の改善についての実験的研究を引き続き進めた。昨年度までの主な問題であった回転制御の不安定さについては、その理由が照明光学系中のわずかな収差にあることを突き止め、その解決のために光学系の改良を行った。さらに、照明光学系と観察光学系のミスマッチによる新たな問題の存在も確認し、その改善に向けた予備検討を重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者は、2019年に職場で負った怪我による長期入院と休職、およびその後のリハビリなどの理由により、約半年の間この研究をストップせざるを得なかった。さらに2020年はコロナ禍の対策のため、特に実験研究の遂行に大きな制約をうけた。これらに加えて実験装置の不具合なども発生し、残念ながら当初計画したところまでいまだ到達できていない。ただし、この過程で当初は予想していなかった様々な機能成約要因を見つけることができ、その解決法の探索も少しずつ進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実験と理論検討で明らかになった様々な問題を解決することを目的として、研究をすすめる。この回転制御法では共通光路干渉を利用するため、基本的には光学系のゆらぎに強い。ところが、ある種の光学素子の不完全さに対しては、この特徴が活かせない事がわかった。そこでこの問題を解決するために、光学系の改善を行う。そして、可能な限り実験を重ね、光学素子の不完全さの回避や調整方法の改良を行い、安定した回転制御をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述のように、2019年の怪我(休職)による研究中断、2020年のコロナ禍が引き起こした諸問題による研究中断などを原因として、研究遂行に遅れが生じている。次年度は、残る再現性の問題の解決に向けて、実験系の改良と理論検討をすすめる。
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