ロボットが扱う対象は“乾燥”していることが暗黙の前提であったが,実際には,食品,台所用品,工業用部品,臓器など液体にまみれている物体も数多く存在する.そこで,濡れていても乾燥していても安定把持が可能なシステムを目指し,ロボットハンド用皮膚テクスチャを開発した.そこで得られた知見をもとに,本研究では,表面のテクスチャや液膜を上手く活用して,表面摩擦を操ることで,物体把持・放出を実現する新しい物体把持の方法論の確立にトライする.昨年度は,乾潤両状態で高摩擦を得られる表面構造(テクスチャ)と,潤滑作用を利用した摩擦低減機構を組み合わせ,能動的に摩擦を低減できる流体指をベースとした,3本指から構成されるソフトロボットハンドシステムの開発を行った.令和2年度では,このロボットハンドシステムの改良とともに,開発したロボットハンドを用いて種々の物体把持や操りを実現する手法の実現に挑んだ. 表面に潤滑剤を滲出させるための流管を指中央部に配置し,シリコーンゴムの座屈現象を活用して指の関節を構成した,指の関節は,指側面部に添わしたワイヤーの牽引により曲がる.この曲がり量の観点から指形状の準最適化を行った. ついで,開発した3本指ロボットハンドで様々な物品のハンドリングに挑んだ.テニスボール,スナックの入った袋,ケーブル,ペン,紙箱,ペットボトル,ワイングラス,泡立て器などの調理器具のハンドリングに成功した. 液体滲出により接触部の表面摩擦を変えることで指を滑りやすくすることで把持位置を変えるインハンドマニピュレーションの実現も行った.
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