本研では振動で動力を伝達でき,環境の負荷に応じて減速比が変化する無段変速機を開発するものであり,その無段変速機の大きさの目標は,直径3 mm,長さ10 mmの円筒内に収まるものとした.また,この振動により駆動する無段変速機に生じる物理現象を明らかにし設計方法を確立することも目標としていた.この大きさに収めることができる提案機構を製作し,駆動することには成功した.具体的には,質量約0.3 gで振幅約0.015 mmで230 Hzの振動を加えることで約1.0 mm/sの速度で直動運動させることができた.しかし,その直動運動は無負荷のときのみでしか実現できておらず,当初予想していた原理では説明できない動きも観測され,また再現性が乏しかったためその原因を究明することができなかった.さらに,当初予測していた原理では,振動数にほぼ比例して駆動速度が調節できると考えていたが,ある特定の振動数でのみ駆動でき,速度を調節することもできなかった.当初の想定した原理のみでは十分に説明することができず,十分な原理の理解には至らなかったため,当初目標にしていた設計方法を確立することはできなかった.この提案機構は小型化できることを特徴としていたため,小型の実験装置を製作したが,その製作において大きさに対する加工精度を保つことが容易ではなく,またその動きを計測することも難しくなり,十分な観測ができない部分があった.今後,これらのことを踏まえて,実験装置を再構築し研究を進めていく予定である.
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