研究課題
電気自動車の駆動モータを始めとする回転機の設計では,複雑な相関を持つ多数の特性量に関する仕様を満足しつつ,限られた時間内で性能を最大化しなければならない.トポロジー最適化は寸法等を変数とする従来法とは異なり,穴の生成消滅を含めて機器形状を自由に変形し,目的の仕様を満たす機器構造を探索する.トポロジー最適化により,性能要求を満たす新しい回転機構造を発見できるため,研究者のみならず産業界から注目が集まっている.しかし電気機器のトポロジー最適化には膨大な回数の電磁界有限要素解析を伴うため,実行に数日~数週間を必要としており,これが実利用の大きな障害となっている.本研究はトポロジー最適化の計算時間を大幅に短縮し,それにより新規回転機構造の発見を可能とすることを目的とする.本年度は,永久磁石埋め込み型モーター(IPMモータ―)に焦点を当て,深層学習を用いたトポロジー最適化の基礎検討を行った.まずIPMモータの断面画像より,平均トルク,トルクリップルの特性を出力する深層学習機を構成した.つぎに深層学習機を用いて,IPMモータ―のトポロジー最適化を行った.この結果,有限要素法を用いてトルク性能を評価する従来のトポロジー最適化に比べ,10%の計算時間でほぼ同程度の最適化結果が得られることを確認した.また,本手法は多目的最適化の高速化にも有効であることを実証した.これらの研究成果を国際会議CEFC2018にて発表したところ,出席者から非常に高い注目を集めた.
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は,まず計画通り深層学習機によるモーターのトルク性能の推定精度を評価した.この結果,深層学習機は期待通り高い精度を有することがわかった.このため,次年度以降に計画していた深層学習機を使ったトポロジー最適化の研究を前倒しして行った.この結果,深層学習の導入によりトポロジー最適化の計算量を1/10程度に短縮できる可能性があることがわかった.このことから,本研究は計画以上に進展していると評価した.
前年度に構成した深層学習機は,モーターのトルク性能を10程度のクラスに分類するものであった.この場合,トポロジー最適化における進化計算の最終段階では,上位のクラスに個体集団が集まるため,個体の差別化をするのが難しかった.このため,次年度においてはモーターのトルク性能を実数値で評価する回帰計算を,深層学習機で実現する予定である.
国際会議に参加する際,安価な旅券を手配し,経費の節約に努めた結果,未使用分が生じた.次年度以降に,学会での発表回数を予定より増やすことで,未使用分を有効に使用する計画である.
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
IEEE Transactions on Magnetics
巻: - ページ: -
10.1109/TMAG.2019.2901906
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