研究課題/領域番号 |
18K18844
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
都甲 薫 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30611280)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 多層グラフェン |
研究実績の概要 |
電気自動車や携帯機器のバッテリーの革新を目指し、二次電池の全固体化・薄膜化の研究が活発化している。中でも、軽くて柔らかい「フレキシブル全固体薄膜二次電池」は、どこにでも設置できることに加え、積層による高性能化が容易であり、「究極の電池形態」といえる。その実現のための要素技術として、負極材料であるグラファイト薄膜(厚い多層グラフェン)をプラスチック上に合成し、バルク・グラファイト級の負極特性を実証することを目指す。 これまで、NiとCの「層交換」により、ガラス基板上に多層グラフェンを低温(500℃)で合成することに成功した。本年度は、当初計画であった「多層グラフェンの低温合成に向けた層交換金属の探索」に加え、「負極特性評価技術の構築」を前倒しで行った。 状態図を用いた調査から、Cと層交換する金属触媒の候補として、これまでに検討したCo、Ni以外にFe、Cu、Sn、Sb、Pd、Ag、Pt、Auなどが挙げられた。これらの金属触媒について、非晶質C/金属触媒/石英基板の構造を製膜し熱処理することで、多層グラフェンの合成温度を一通り調査した。その結果、層交換可能金属を周期表の観点から系統的に明らかにするとともに、低温で層交換を発現する可能性のある金属触媒をFe、Co、Niの3種類に絞り込んだ。これらについて、多層グラフェンの結晶成長様態を微分干渉顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、およびエネルギー分散型X線分析(EDX)により評価した結果、Niを用いた層交換において、最も均一な多層グラフェンを低温で合成できることが判明した。プラスチック上合成にはさらなる低温化が必要であるが、プロセスの工夫により実現可能であると考えている。また、負極特性の評価について物質・材料研究機構や産業技術総合研究所と協力し、層交換多層グラフェン薄膜の負極動作を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度(1年目)は当初計画(層交換金属の解明)の達成に加え、3年目に行う予定であった負極評価技術の立ち上げについて、物質・材料研究機構や産業技術総合研究所の協力を得ることで完遂した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目には、プラスチック上多層グラフェンの合成に向け、「Ni成膜条件の検討」や「Ni中へのC添加(C層挿入)」による層交換温度の低温化を図る。また、負極構造として適した「多層グラフェン/集電体(金属)」構造を得るため、「逆層交換」の検討を行う。3年目には、2年目に調査したパラメータをもとに多層グラフェンを合成し、負極特性の評価を実施する。
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