電気自動車や携帯機器のバッテリーの革新を目指し、二次電池の全固体化・薄膜化の研究が活発化している。中でも、軽くて柔らかい「フレキシブル全固体薄膜二次電池」は、どこにでも設置できることに加え、積層による高性能化が容易であり、「究極の電池形態」といえる。その実現のための要素技術として、負極材料であるグラファイト薄膜(厚い多層グラフェン)をプラスチック上に合成し、バルク・グラファイト級の負極特性を実証することを目指す。 これまで、8種の金属と非晶質炭素の「層交換」により、ガラス基板上にグラファイト薄膜を低温で合成することに成功した。特に前年度においては、層交換の熱処理雰囲気がグラファイトの合成温度に与える影響を調査した結果、非晶質炭素を成膜後に大気暴露することなく熱処理することによって、プラスチック(ポリイミド)の耐熱温度(400 ℃)以下におけるグラファイト合成に成功した。また、層交換の初期位置を逆にした「逆層交換」により、グラファイト/集電体(Ni)/プラスチック構造の合成に成功し、グラファイト薄膜の優れた負極特性を実証した。 本年度においては負極特性のさらなる向上を目指し、グラファイト薄膜の合成条件と負極特性の相関を調査した。その結果、低温合成したグラファイトではバルク・グラファイトを上回る充放電容量が得られ、さらに優れた容量維持率(サイクル特性)を示すことが明らかとなった。以上、本研究では当初の研究計画を完遂したことに加え、目標を上回る負極性能を実証した。炭素負極を用いたフレキシブル二次電池の実現につながる成果である。
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