研究実績の概要 |
本研究の目的は、室温で動作する革新的な脳機能模倣型の電子デバイスを開発することである。今年度は前年度に引き続き、パルスレーザー堆積法によりクラスターグラス磁性体薄膜を作製してその磁気特性を評価するとともに、クラスターグラス酸化鉄のp-n接合素子の作製を試みた。まずn型層酸化鉄として用いるCo(Fe,V)2O4およびCo(Fe,Ga)2O4薄膜を作製し、磁気測定によって、室温でクラスターグラス状態になっており、MCD測定によって、光照射によってグラス状態が融解し、磁化が増大する(グラスの光融解)ことが分かった。また、Co(Fe,Ga)2O4の磁気構造を研究する過程において、同様にPLD法によって作製したCo(Mn,Ga)2O4薄膜において、Mnの濃度の増大に伴い、キャリアタイプがn型からp型に変わることがゼーベック測定によって、明らかになった。今年度後半にはこれらのn型薄膜とp型酸化鉄(GeFe2O4, FeO1-x, Co(Fe,Mo)2O4)の接合素子の作製実験を実施したが、界面でのFeイオンの価数揺動状態を抑制するため、p型層とn型層を分離するための絶縁層(MgGa2O4)の導入が必要であることが分かった。しかしながら、この絶縁層を蒸着する際に、酸化鉄層へガリウムが拡散してしまい、素子特性が低下してしまうことが判明した。今後は絶縁層の作製条件を検討するとともに、接合素子の界面における結晶構造をより詳細に評価する予定である。
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