研究実績の概要 |
Feの上下をAuで挟むAu/Fe/Auの3層構造からなる磁気プラズモンセンサ試料を作製した。外側のAu(tAu1)は伝搬する表面プラズモンの損失を低減し表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance; SPR)カーブをシャープにする役割およびFe(tFe)の酸化防止の役割、FeはSPRに磁気光学効果を与える役割、内側のAu(tAu2)は伝搬する表面プラズモンの金属側への染み出しが基板に到達し放射されることを防止する役割をそれぞれ担う。磁気光学効果によってSPRを変調し、磁化反転に伴う反射率の差分を規格化した指標を定義した。各膜厚は指標が最大となるよう設計し、試料を作製したところ、磁化反転に伴って指標が3%変化したことを確認した。別途、Fe, Coと強磁性金属単体で磁気光学効果を評価したところ、Coの方が磁気光学効果に伴う反射率の変化が大きく、小さな磁場で磁化が飽和する傾向が見られ、酸化の違いと判断した。今後、酸化の影響が小さいCoを磁気プラズモンセンサに応用する。 金表面にSequence1, Sequence2と呼ばれるDNA配列を固定し、濃度0.2~4%のエタノールガスを供給し、DNAによるエタノールガスの吸着によるセンサ信号の違いを試験した。金表面に上記配列のDNAを固定したSPRセンサでは、DNAを固定しないSPRセンサと比較して2~3倍信号が大きくなり、エタノールガスを吸着していることがわかった。DNAの厚さを10nmと想定してこれらのセンサ信号をシミュレーションにより評価したところ、DNAの近くのエタノール濃度が20~80倍大きくなっていることが見積もられた。今後、0.2%よりも低濃度の条件での吸着度の評価、ガス種による吸着度の違いを評価し磁気プラズモンセンサに組み合わせることで高感度、かつ、ガス種選択性のあるSPRセンサの実現を目指す。
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