研究課題/領域番号 |
18K18853
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高村 陽太 東京工業大学, 工学院, 助教 (20708482)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 圧電体 / スピントロニクス / 逆磁歪効果 |
研究実績の概要 |
アモルファスSmFe2薄膜の垂直磁気異方性の起源を探索するため,偏光X線吸収微細構造(EXAFS)測定を実施した.この測定では,放射光の偏光面に対して試料面を垂直/平行に配置し,EXAFS信号を観測することで,短距離秩序の異方性が分かる.検出端としてSmのL3端を用いた.明瞭なEXAFS振動を検出し,さらに異方性を持った信号が得られた. SmFe2薄膜のフリー層への適用可能性を探るため,薄層化を試みた.100nmから10nmまで系統的に膜厚を変化させて,磁化特性と磁歪効果の評価を行った.垂直磁気異方性は膜厚に伴って減少した.垂直磁気異方性を示した最薄の膜厚は20nmであった.磁歪定数も膜厚の減少とともに下がったが,20nmの試料では100以上の値を示した.この値は,試作レベルとしては十分なものと考えている. ピエゾエレクトリックMTJの圧力印加構造のみを試作した.MTJ部分はW/SmFe2/Wの単純な積層構造とし,SmFe2層の磁化特性の変化を観測することで圧力印加効果の実証を試みた.圧電体としては,室温で成膜可能なAlNを用い,これを反応性スパッタリング法により形成した.デバイスプロセスをゼロから設計し,マスクレス露光装置を用いた光学リソグラフィ,イオンミリングによるドライエッチング技術,Al抵抗加熱法による電極パッド形成などを組み合わせて,実際に試作を行った.図1に作製した素子の上部顕微鏡写真を示す.図2に素子の加工前後で測定したSmFe2の磁化特性を示す.加工前後で若干ループ形状は変化したが,強磁性が失われることはなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピエゾエレクトリック磁気抵抗素子の実証に向けて順調に研究が進んでいる.試作した圧力印加構造については,今後圧力印加効果を実証する.EXAFS測定は研究グループ内では初めての試みであったが,問題なく完了することができた.残りの課題は解析であるが粛々と進めていく計画である.
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今後の研究の推進方策 |
圧力印加機構の実証・定量評価:現在のところ,測定系の問題により圧力の印加の確認には至っていない.圧力印加の確認は,サンプルに電圧を印加し,圧力によって磁化特性が変化する逆磁歪効果を磁化測定で検出することで行う計画であった.これを行うには,電圧源から磁化特性装置にセットしたサンプルまで配線を追加する必要がある.しかし,この追加した配線自体が測定結果に影響を及し,正確な評価が今のところできていない.今後は配線方法を工夫し,より細い配線を使うなどし,配線があったとしても正確な磁化測定が行えるようにする. EXAFS解析:解析を進め,近距離秩序に異方性の起源を裏付ける解析結果を得たいと考えている.さらに,この近距離秩序の異方性が実証できたとしたら,なぜこのような異方性が形成されるのか,どのようにしたら形成できるのかなどを追究していきたい.
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