優れた光誘電効果を示す物質(光応答性誘電体)の新規開発と、光誘電効果のメカニズム解明が本研究課題の目標である。本研究課題では、これまでにLaAlO3系及びBaAl2O4系物質において即時的光誘電効果と永続的光誘電効果をそれぞれ発見し、第一原理計算の援用によって酸素欠損によって導入される強く局在したギャップ内準位が光誘電効果の発現に重要な役割を果たしている可能性を見出した。さらに、高周波数帯域まで光照射下の誘電測定を実施可能なシステムを新たに構築して光照射によって生じる付加的な分極成分のダイナミクスの究明に取り組み、光誘電効果の起源に関する詳細な実験的知見の収集に取り組んできた。2020年度は本研究で我々が見出した新規光誘電体Ba[(Al0.99Ga0.01)0.97Zn0.03]2O4に着目し、暗状態および光照射状態における誘電率を、室温から750Kの広い温度範囲において10^2Hz~10^7Hzの広周波数に亘って測定した。それによって得られた結果を解析することによって、①複数のギャップ内準位にトラップされた光励起キャリアの外部電場に対する分極応答が光誘電効果において重要な役割を果たしていること、②ギャップ内準位にトラップされた光励起キャリアは昇温と共に逐次的に緩和して約700Kで永続的光誘電効果が完全に消失することを明らかにした。これらの結果は、適切な元素置換を施すことによってBa[(Al0.99Ga0.01)0.97Zn0.03]2O4における光誘電効果の時定数を制御することで、光誘電レシーバや光誘電スイッチ、光誘電メモリ等の新たな光素子の自在なデザインの可能性を示している。
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