本研究では、任意のフォノン周波数においてフォノン流の制御を行う磁性フォノニック結晶(P-AML)とスピンゼーベック(SS)素子を組み合わせたP-AML/SS素子の創成およびP-AML/SS素子を用いたスピンゼーベック効果の電気的出力の増大・変調を目的として研究を行った。 昨年度のフォノン遮断型P-AML/SS素子に続き、フォノン局在形P-AML/SS素子の設計にあたり、フォノン流として固体中の弾性波の伝搬を仮定した計算を行った。その結果、バンドギャップ中に局在波長が出現することが確認できた。ただし計算で得られた局在波長は設計で想定した値と若干ずれが生じることも分かった。また弾性波の減衰を考慮した場合、局在波長での波の強度は低下し、また半値幅も若干広がることが分かった。 実験的には、昨年度開発した試料表面に形成した白金薄膜抵抗の温度依存性を用いた温度推定手法について、実際の測定にあたっての再現性にまだ課題があったため、測定治具等の改良を行った。その結果、数μV~10μV程度のSS出力電圧出力の平均値に対して、平均値で規格化した標準偏差が、従来は30%以上あったのに対し、10%未満とでき、微弱なSS出力電圧の変化に対しても安定して評価できるようになった。この手法を用いて、多層膜の層数を変えた際のSS出力の変化を評価した結果、総数が大きいほど出力が大きくなる傾向が得られ、多層膜化によりフォノン流に何らかの影響を与えられることが改めて確認された。フォノン局在形A-AML/SS素子については、昨年度後半に成膜装置が故障し使用できなかったため、十分な検証ができなかったが、現在復帰したため、引き続き検証を進める。
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