本研究では、ナノ多層膜構造によりフォノン(熱)伝導を制御し、それによりスピン流を制御する人工磁気格子の創成を目指し、多層膜構造がスピンゼーベック(SS)効果の出力に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。まず単純なモデルによりフォノンの伝搬について計算し、ナノ構造が伝搬に及ぼす影響について系統的に評価した。またPt膜の抵抗変化から試料表面温度を正確に評価する手法を開発し、精密な出力評価ができるようになった。これにより、多層膜の構造を変えた際のSS出力の変化を評価した結果、層数が大きいほど出力が大きくなる傾向が得られ、多層膜構造によりフォノン伝導が影響されている可能性が確認された。
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