本研究では、半導体カイラルフォトニック結晶を用いて、トポロジカルな性質を有する光ワイル点を形成し、それに付随するトポロジカルエッジ状態を利用して、円偏光発光する光トポロジカル能動素子を実現することを目的としている。研究期間を延長した最終年度であった当該年度では、これまでに設計・試作してきた15ミクロン四方のGaAs薄膜からなる半導体カイラルフォトニック結晶に対して、通信波長帯域における波長可変レーザおよび高感度検出器を用いて、角度分解透過スペクトルを測定し、光ワイル点の実験実証を目指した。 まず、三次元フォトニック結晶の作製において半導体薄膜の高精度な積層のために採用しているマイクロマニピュレーション法について、新たに光学顕微鏡観察下での高精度で簡便な積層方法を開発した。これによって、半導体カイラルフォトニック結晶の作製が大幅に簡便になった。この成果は学術論文を出版して広く国内外に報告した。 次に、試作した半導体カイラルフォトニック結晶の通信波長帯域における測定について、近赤外光の高感度検出が可能で、且つ試料からの発光の広い空間領域を同時観測可能な、冷却2次元InGaAs検出器を導入し、角度分解透過スペクトル測定を行った。その結果、特定の波長領域において、試料の端面でのみ発光特性が観測され、光ワイル点に由来するトポロジカルエッジ状態を示唆する実験結果を得た。現在、得られたデータを詳細に解析中である。 また、カイラルフォトニック結晶における光ワイル点の特徴的な光伝搬について、前年度に投稿した学術論文が出版された。
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