研究課題/領域番号 |
18K18859
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浜屋 宏平 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90401281)
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研究分担者 |
山田 晋也 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30725049)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 薄膜トランジスタ / フレキシブル |
研究実績の概要 |
本研究では、これまでのフレキシブルエレクトロニクスの概念を覆し、アモルファス半導体や有機半導体を伝導チャネルとしない結晶性無機半導体を用いた高性能フレキシブルエレクトロニクスと半導体スピントロニクス技術を融合した新分野開拓の芽を創出する。具体的には、研究代表者が最近実現している「フレキシブル基板上の高配向性結晶(擬似単結晶)ゲルマニウム(Ge)形成技術」を基軸とし、10~15年後の新しいフレキシブルエレクトロニクス産業基盤となり得る「高性能・低消費電力フレキシブルスピン薄膜トランジスタ[Thin Film Transistor (TFT)] 実現の可能性を探索する。まず、これまで行っていたフレキシブル基板上へのTFT作製プロセスを用いて、擬似単結晶GeフレキシブルTFTを実証した。電界効果移動度は~10 cm2/Vsであり、この値はpチャネルフレキシブルTFTとしては世界最高値であった。しかし、今回のゲートスタック作製プロセスは最適化されておらず、今後はゲート酸化膜/擬似単結晶Ge界面における欠陥(クーロン散乱の要因)を低減させる手法を開発することが重要と言える。一方、フレキシブル基板上のp型ゲルマニウム薄膜の移動度(~200 cm2/Vs)は、同程度のキャリア密度を考慮した際の単結晶Geで期待されている移動度(~700 cm2/Vs)よりもはるかに低かった。そこで今年度は、金誘起層交換成長法を用いて低温形成した擬似単結晶Ge(111)薄膜の電気伝導特性の解明に注力した。擬似単結晶Ge(111)薄膜のホール移動度およびキャリア密度の温度特性を詳細に評価・解析した結果、キャリアの発生には触媒として用いているAuによる深いドナー準位の形成が関係しており、ホール移動度の低下を引き起こす主な要因となっていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フレキシブルGeTFT用の低温プロセス開発とTFT動作の実証、擬似単結晶Ge(111)薄膜の電気伝導特性の解明など、課題の抽出などについて、各項目を詳細に検討することができた。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高性能なフレキシブルGe薄膜を得るために、Auの汚染を減少させる新たな手法の開発に着手する。同時に、フレキシブルスピンTFT構造作製のため、フレキシブル基板上へのn型Geスピン伝導層の作製およびその上へのCo系ホイスラー合金薄膜のMBE成長に着手する。その後、低温ゲートスタック作製技術と微細加工技術を用いて、フレキシブル基板上のCo系ホイスラー合金/n-Ge層をスピンTFT構造へと加工するプロセスの開発と、強磁性電極の磁化の方向に依存した磁気抵抗効果の実証を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、擬似単結晶Ge(111)薄膜の電気伝導特性の理解、TFTプロセス開発、TFT動作実証を中心に研究を進めたため、微細素子を作製するために計上していた電子線描画装置利用費、フレキシブル基板上のCo系ホイスラー合金/n-Ge層の構造評価のために計上していた依頼分析費用が当初の計画よりも減額した。また、学内の低温センターの保守点検により寒剤の供給が一定期間停止したため、寒剤費が当初の計画よりも減額した。変更分はいずれも次年度の研究で使用する。
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