研究課題/領域番号 |
18K18860
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉本 靖博 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70402972)
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研究分担者 |
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20333643)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | コオロギ / アンテナフェンシング / 闘争行動 / 筋刺激 |
研究実績の概要 |
コオロギを含む昆虫が見せる特徴的な振る舞いの一つであるアンテナフェンシングに着目し,アンテナフェンシングにおいて闘争行動成立のためにキーとなる運 動は何か,そして,その運動を生み出す仕組みはどうなっているのか?を解明していくことで,「闘争行動を引き起こすアンテナフェンシングの構成論的理解」 とした本研究の目的の達成に向けて,2019年度では,サブテーマ「アンテナフェンシングの詳細な運動解析(1-b)」を実施するとともに,「筋刺激によるアンテナフェンシングへの介入実験(2)」および「アンテナフェンシングを行うデバイスの作製(3-a)」に着手した.「アンテナフェンシングの詳細な運動解析(1-b)」については「筋刺激によるアンテナフェン シングへの介入実験(2)」と合わせて,ハイスピードカメラを用いた運動解析を行い,アンテナフェンシングがどのような複雑な運動を実現しているのかの解析を行ってきた.また,「筋刺激によるアンテナフェンシングへの介入実験(2)」については,特に注力して研究を実施した.昨年度開発した,多様な刺激を与えられるよう周波数や強度を様々に変更することが可能で,さらに,実際に刺激できているのか(電流が流れているか)を判定できる電気刺激装置を用いるとともに,電極の挿入方法を再検討し実験中に抜けにくくすることで確実に電気刺激を行えるようにした. その結果,安定して電気刺激実験を行えるようになり,電気刺激を与えた際の闘争行動実験の試行回数を増やすことができた.刺激を与える個体とintact個体との闘争行動実験を行った結果,刺激を与えたいくつかの個体において,予備闘争では負けたが本闘争では逃げ回るだけでなく,時々闘争に挑むといった結果が得られた.これは,電気刺激を与えることにより,クロコオロギの活動性を向上していることを示唆するものである
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画での実施スケジュール案では,2019年度は,「アンテナフェンシングを生み出す構造の解明(1-a)」と「アンテナフェンシグの詳細な運動解析(1-b)」に目処をつけ,「筋刺激によるアンテナフェンシングへの介入実験(2)」および「アンテナフェンシングを行うデバイスの作製(3-a)」を実施することが主な実施予定であった.研究実績で述べたように,「アンテナフェンシングを生み出す構造の解明(1-a)」と「アンテナフェンシグの詳細な運動解析(1-b)」については順調に研究を進められていると考えられる.さらに「筋刺激によるアンテナフェンシングへの介入実験(2)」については,新たな電気刺激装置による,刺激実験についても実施回数を増やすことができ,かなり順調に進めることができたと考えている.一方,「アンテナフェンシングを行うデバイスの作製(3-a)」については,着手してはいるが,明確な大きな成果を出すまでには至っていない.よって,総合的には,「おおむね順調に進展している」という自己評価 を行った.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では,本研究課題は2019年度で終了の予定であったが,2020年7月に開催される予定であった国際学会にて発表を行うため,補助事業期間延長申請をした.しかしながら,COVID-19の影響のため,該当国際学会が2022年まで延期となった.そこで,2020年度では,2019年度に引き続きサブテーマ「筋刺激によるアンテナフェンシングへの介入実験(2)」および「アンテナフェンシングを行うデバイスの作製(3-a)」に着手し,研究を進めていくことで,本研究課題の目的である「闘争行動を引き起こすアンテナフェンシングの 構成論的理解」のより深い達成を目指す.また,当初予定だった学会とは別の学会での発表あるいは結果をまとめて論文誌に投稿することを検討していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で得られた成果を国際会議にて発表することを予定しているが,本研究での成果発表に適していると考えられる国際会議が2020年7月に開催される予定であった.そこで,その国際会議への参加費用として本研究課題の助成金を使用するため,補助事業期間延長申請をし,次年度使用額として繰り越した.しかしながら,COVID-19の影響のため,該当国際学会が2022年まで延期となった.したがって,繰り越した予算については,追加実験を行うための物品購入および 研究分担者が所属する北海道大学青沼研での実験やミーティングの旅費として使用する予定である.
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