研究課題/領域番号 |
18K18862
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
喜多 隆 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10221186)
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研究分担者 |
原田 幸弘 神戸大学, 工学研究科, 助教 (10554355)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 太陽電池 / ヘテロ界面 / 量子ドット / アップコンバージョン |
研究実績の概要 |
太陽電池には原理的に避けることができない透過損失や熱損失などがあり、入射エネルギーの一部は利用できない。これによって、太陽電池の変換効率は非集光時の単接合型太陽電池では32%が限界である。この限界を突破するには新しい原理で動作する太陽電池が不可欠である。本研究では、この新しい原理で動作する高効率アップコンバージョンプロセスの詳細を明らかにする。また、これを応用して、本来なら透過して損失となる太陽光のスペクトル領域をアップコンバージョンによって広くカバーし、これまでの太陽電池の変換効率限界を突破する根本原理を明らかにすることを目的にしている。平成30年度は下記の研究を実施した。 (1)エピタキシャルヘテロ界面の作製と界面基礎物性評価 十分に実績がある分子線エピタキシー技術を用いてAlGaAs/GaAs系を基本とするヘテロ界面を詳細に調べた。特に、本研究ではヘテロ界面におけるキャリアの蓄積と励起基礎物性を明らかにするため、光電流とキャリア再結合発光を同時に計測する独自のシステムを構築した。これによって、ヘテロ界面に蓄積されたキャリアの光電流引き出し性能と再結合特性の関係をはじめて明らかにすることに成功した。 (2)アップコンバージョンメカニズムの解明 AlGaAs/GaAsヘテロ構造をi層に内包するp-i-n構造を作製し、光電流の励起波長および光強度依存性を詳細に調べて、ヘテロ界面におけるバンド内光吸収強度の評価を行い、バンド内の遷移にもかかわらず、バンド間遷移と同程度の強い光吸収が生じていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度光電流とキャリア再結合発光を同時に計測するシステムを構築して太陽電池のバイアス特性を精密に変化させながら電流として取り出すことができるキャリアと再結合するキャリアを定量的に同時計測した。これにより今まで明らかになっていなかったキャリア取り出し効率を定量的に明らかにできたことによって、太陽電池の内部電界の設計などにおける次の研究を推進する重要な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヘテロ界面におけるアップコンバージョン(2段階光励起)を最大化するため、量子ドットの構造を制御するとともに、太陽電池構造の最適化と試作太陽電池の基礎特性評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施の要である分子線エピタキシー装置の性能を維持するためのオーバーホールを2018年度に依頼して2019年4月に実施した。試料作製の最良のタイミングを検討した結果、作業が2019年度になったために当該助成金が発生した。作業はすでに完了し、研究計画に変更はない。
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