本研究課題では,大規模解析により得られたsupercomputed dataと物理的考察を踏まえた学習により,地震による物理的な被害(構造物や地面の揺れ等)推定のための人工知能構築手法を開発し,その有効性を示すことを目的としている.このようなアプローチは他分野への拡張も可能と考えられるため,特に汎用性を意識しながら開発を行うこととしている.本年度は,昨年度までの「地震による被害の物理的考察を踏まえた学習手法の開発」と「supercomputed data創出のための大規模解析手法の開発」を継続しつつ,これを拡張した.具体的には,CPUベースの富岳等のスーパーコンピュータやGPUベースのABCI等のスーパーコンピュータで,supercomputed dataをより効率的に生成可能とする大規模解析手法の開発を進めるとともに,生成されたsupercomputed dataを用いて液状化等のより複雑な現象を対象としてサロゲートモデル構築を行い,その有効性を示した.また,昨年度開発した生成されたsupercomputed dataを用いて支配方程式(=物理プロセス,具体的にはグリーン関数)自体を学習する人工知能を大規模方程式内の前処理として用いる方法をGPU化することで更なる解析コスト軽減が可能となることを示した.これは,従来のequation-based modelingによる解析を,物理的考察を踏まえた人工知能化により,演算自体の稠密化を行うことで,昨今の高演算密度に適した計算機アーキテクチャに親和性の高い演算へ従来の解析による演算をシフトすることで解析コストの低減を実現できることを示しており,equation-based modelingとdata-science的な手法の融合の可能性を示す結果となっている.
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