研究課題/領域番号 |
18K18877
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
山田 剛史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90533422)
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研究分担者 |
川上 周司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 講師 (00610461)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | アンモニア酸化細菌 / 亜硝酸酸化細菌 / Cell-SELEX / DNAアプタマー / 細胞表層タンパク / 金ナノ粒子 / 簡易微生物計測技術 |
研究実績の概要 |
生物学的廃水処理プロセスの適切な管理のためには、従来の水質指標とともに、廃水処理にとって重要な機能を持つ微生物数 (特定微生物数) など、微生物指標を取り入れた相互補完的な管理が望ましい。特定微生物数を指標化するためには、簡便で迅速に廃水処理現場において、生物学的廃水処理プロセスに存在する特定微生物数を計測できる技術が必要となる。しかしながら、現在のところ、そのような微生物計測技術は皆無である。そこで申請者は、機能性核酸分子と金ナノ粒子による廃水処理系微生物の新計測技術の原理を考案した。本研究では、複数種の標的微生物を識別する機能性核酸分子を明らかにするとともに、機能性核酸分子修飾金ナノ粒子による定量法の確立を目的とした。 本年度は、複数種のアンモニア酸化細菌を特異的かつ網羅的に識別できるDNAアプタマーの獲得とその特異性を明らかにすることを試みた。6種類のAOBの細胞表層タンパクを特異的かつ網羅的に識別するDNAアプタマーを探索するため、ランダム一本鎖DNAライブラリーを用いた30回のCell-systematic evolution of ligands by exponential enrichment (Cell-SELEX) 法を行った。次世代シーケンサーを用いて、DNAアプタマー候補の塩基配列を解析したところ、Cell-SELEX法を繰り返すことで、DNAアプタマー候補が徐々に収斂していった。最終的なDNAアプタマー候補は、DNAアプタマープールにおけるリード占有率が2.3%以上を占める塩基配列から選択した。また、反応条件下における得られたDNAアプタマー候補の二次構造も決定した。同様に、AOBで確立した同様なCell-SELEX法によって、3種の亜硝酸酸化細菌に特異的なDNAアプタマーの選別と二次構造の決定も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数種のアンモニア酸化細菌 (AOB) を識別できるDNAアプタマーを選別するため、6種のAOBに対して順番にCell-systematic evolution of ligands by exponential enrichment (Cell-SELEX) 法を適用する方法を考案して実施した。他にも、AOBを識別できるDNAアプタマーの特異性を高めるため、非標的微生物を使用したカウンター法も導入した。Cell-SELEXの回数も、従来法のあいまいな部分を科学的に明らかにするため、次世代シーケンサーを用いたビックデータを利用した結果、50%以上のリードが収斂させるには、30回のCell-SELEXが必要であることも明らかにできた。また、これらを評価可能なバイオインフォマティクス環境も整備できた。AOBに対して網羅的なDNAアプタマー選別法が確立できたので、亜硝酸酸化細菌 (NOB) を標的としたDNAアプタマーの選別にも応用できた。最終的には、NOBを識別できるDNAアプタマー候補も獲得することができた。また、それらのDNAアプタマーは、それぞれ特許出願も行った。 しかしながら、それぞれのDNAアプタマー候補の特異性を決定するため、リアルタイムPCR法を用いた方法を採用していたものの、鋭意検討を重ねたものの測定回ごとのデータに大きな差異が生じる問題が発生した。すなわち、本法法では、科学的根拠に基づいたデータの取得が難しいことを意味していた。来年度は、別の方法を考案・採用して評価を行う必要がある。 上述したように、本年度終了までに、AOBとNOBを識別できるDNAアプタマーの選別に成功できたものの、特異性評価に関しては測定方法の問題が発生した。そのため、本年度は、おおむね順調に研究が進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、AOBとNOBを識別できるDNAアプタマーの選別に成功したため、本年度は、選別したDNAアプタマーの特異性の評価と金ナノ粒子とDNAアプタマーによる定量法の確立を目指す。一方、DNAアプタマーの特異性評価では、リアルタイムPCR法での評価が測定上の問題が発生したため、本年度は、蛍光分光光度計を用いた方法に切り替える。蛍光標識を結合させたDNAアプタマーを利用するためより直接的な方法であるため成功の確度も高いと思われる。また、同様に、蛍光分光光度計でも評価が難しい場合は、セルアナライザーを用いた評価も検討項目として列挙しておく。ただ、その場合、当該研究室にはセルアナライザーは設置されていないため、大学内の別の研究室の協力を受けて対応する。また、AOBやNOBのDNAアプタマーの特異性評価については、共同研究者の川上講師との連携も密にしておく。 次に、金ナノ粒子とDNAアプタマーによる定量法の確立については、本年度より研究実施項目に掲げている。現在まで、使用する金ナノ粒子のサイズなどの文献調査を完了しており、実際にDNAアプタマーを結合させた金ナノ粒子を使用した方法の検討を行う段階となっている。 金ナノ粒子を用いた微生物定量については、研究協力者の大門教授との打ち合わせも密にして対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAアプタマーの特異性評価に利用するため、リアルタイムPCR試薬、キャピラリーおよびプライマーなど計上していた。鋭意検討を重ねたため、上述した消耗品は購入・使用したものの、当初計画していた分の購入は行わなかったため残金が生じた。本年度、特異性評価は別な手法に切り替えることを計画しており、その方法に必要な消耗品の購入に充てることに変更する。
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