研究課題/領域番号 |
18K18879
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤田 純男 京都大学, 防災研究所, 教授 (70187293)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 地表断層 / 断層運動 / スリップパーティショニング / XFEM |
研究実績の概要 |
ライフライン構造物のように空間的に複雑なネットワークを構成するシステムの地震対策を進めるためには,システム全体の機能が影響を受けることを避けるため,地表断層変位への対策が必要である.地表断層変位は,逆断層・正断層・横ずれ断層といった震源メカニズムに対応する地下の断層運動が支配的であって,それに対応した変位が表れると通常考えられている.ところがスリップーパーティショニングが生じた場合,例えば2016年熊本地震のように地下の右横ずれ運動と正断層運動を別々の地表断層変位によって解消する場合がある.本研究は,スリップパーティショニングを包含した地表断層変位の発生に関する新しい力学的理論を構築し,その高精度予測を目指すものである.
昨年度までに,スリップパーティショニングを表現するために必要となる分岐断層の表現方法について,これまでと異なる定式化による数値解析手法を構築してきた.具体的には,これまでに提案されている拡張有限要素法(XFEM)に,新たに分岐断層を取り扱いやすくするような表現を導入した.要素に対して自由度を付加する(エンリッチする)ような表現を分岐部分の表現に拡張するため,その拡張としてtip要素を考案し,その重ね合わせで分岐部分を表現するものである.試行として熊本地震本震の動的破壊シミュレーションを行ったところ,分岐部から主断層である布田川断層に破壊が進展するような実際のシナリオは,ランダムな応力条件下では起こりにくいことが明らかとなった.このことは,スリップパーティショニングという分岐表現のみならず,1つの地震として分岐部が果たす役割やプロセスの理解が十分でないことを示唆している.そこで昨年度は,さらに分岐部における応力状態について検討を深めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
断層の分岐部が断層破壊に果たす役割について,系統的な研究が進められているが,本来の目的であるスリップパーティショニングのメカニズムには踏み込めていない.
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今後の研究の推進方策 |
本年度が最終年度であることを踏まえ,まず現在までに開発した新しい解析手法に関する論文を執筆して公表する.また,分岐部が断層破壊に及ぼす影響について検討を深めた上で,スリップパーティショニングの力学的なメカニズムに踏み込む.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に,ニュージーランドにおいて開催される国際研究集会への参加を予定していたが,新型コロナウイルスの流行により,会場となる研究機関が外国人来訪者の受け入れを拒否する事態となったため,研究集会への参加を急遽取りやめた.このため,旅費として使用予定であった予算を次年度使用額とすることとなった.現時点では,今年度に再度研究集会を実施する予定であるため,この使用額を利用する予定である.
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