研究課題/領域番号 |
18K18881
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 英典 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (40512835)
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研究分担者 |
五味 良太 京都大学, 工学研究科, 助教 (30794284)
松田 知成 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50273488)
松村 康史 京都大学, 医学研究科, 講師 (80726828)
山本 正樹 京都大学, 医学研究科, 助教 (90726837)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 多剤耐性大腸菌 / 都市下水 / アジア・アフリカ / 全ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
本研究では多剤耐性菌の広がりが特に懸念されるアジア・アフリカの新興国の都市部を対象に,都市レベルの多剤耐性大腸菌のプロファイリングを行うことをその目的とした。何万という人間の糞尿からなる下水試料を全ゲノム解析することで,都市レベルの多剤耐性・病原性パターンの詳細データを創出するとともに,多剤耐性大腸菌のクローン集団の識別とその伝播および環境中への排出実態の解明を目指す。さらに,より効率的で簡便なモニタリングへの挑戦として,多剤耐性大腸菌をいくつかの遺伝的グループに分類し,簡便に多剤耐性大腸菌の存在量を推定することができる新たな遺伝子マーカーの探索を行う。当該年度は,ウガンダのマケレレ大学およびタイのマヒドン大学と当該研究での連携体制の確認を行った。ウガンダのカンパラにて,現地調査を実施し,都市下水および集水域の特性に関する地理情報を収集した。また,セフェム系第3世代,ニューキノロン系,および前者2種およびアミノグリコシド系の3剤耐性を持つ大腸菌株を,当該都市の下水試料からそれぞれ48株づつ採取,さらに同様にし尿処理場し尿汚泥試料からそれぞれ45株づつ採取した。 合わせて,これらの試料中の大腸菌および各耐性大腸菌濃度を培養法により測定した。得られた株を純化し,全ゲノム解析に供するための保存株を作成し,DNAの抽出,ライブラリーの作成を開始した。さらに,環境中の薬剤耐性遺伝子の広がり,およびそれらと下水・し尿汚泥試料との関係を検討するために,メタゲノム解析用として,ビクトリア湖の湖水およびビクトリア・ナイル川の河川水のフィルター試料をそれぞれ5試料および4試料採取した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,アジアおよびアフリカのそれぞれ1都市にて本研究を実施できる体制を整えた。アフリカの1都市であるカンパラにおいて,予定通り現地情報の収集を行うとともに,各大腸菌濃度の測定を行い,必要な数・種類の試料および株の取得を行うことができた。以上より,当該研究は概ね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
すでに取得済みのカンパラ試料からの保存株を用いて,DNAの抽出,生成,ライブラリーの作成を実施し,次世代DNAシーケンサーにて全ゲノム解析を行う。耐性遺伝子解析ツールを用いて,耐性遺伝子・病原性遺伝子を株ごとに検出,全ゲノム解析により多剤耐性能を評価する。合わせて,高解像度での系統樹(遺伝的近縁性)解析を行い,各国の臨床試験にて報告されている多剤耐性大腸菌の危険なクローン集団との類縁関係を評価し,伝播実態を明らかにする。合わせて,第二の対象都市として,アジアのタイ・バンコクを対象に,カンパラでの実施した内容と同等の現地調査を行い,試料・大腸菌株の採取を行い,次世代DNAシーケンサーによる全ゲノム解析,多剤耐性脳の評価,伝搬実態の解明を進める。これらのデータを用いて,高解像度クラスター分析により多剤耐性大腸菌を特定の遺伝的特徴ごとにグループ化することを試みる。グループに独自に共通する遺伝的特徴を標的とした新たな遺伝子マーカーの設計を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,DNA抽出,ライブラリー調整ができた試料から順次,次世代DNAシーケンサーによる解析を進める予定だったが,一定程度まとめて調整・解析した方が効率が良いため,一部のみ実施予定だったDNAシーケンシングを次年度に回し,そのための消耗品・解析費を次年度に回すこととした。
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