研究課題/領域番号 |
18K18888
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
中沢 正利 東北学院大学, 工学部, 教授 (20198063)
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研究分担者 |
近広 雄希 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (10778905)
有尾 一郎 広島大学, 工学研究科, 助教 (50249827)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | トポロジー最適化 / 周期性構造物 / カンチレバー橋 / 単位モジュール |
研究実績の概要 |
カンチレバー型式モジュール橋の最適構造を理論的に求めるための有力な方法は、形状最適化アプローチである。この方法は、構造最適化プログラムが市販化されるまでに一般化されており、本研究課題でも市販のトポロジー最適化ソフト(Altair社のHyper Works)を導入している。また、解析結果の妥当性を比較・検証する目的で、フリーソフトとして入手可能なプログラムも導入し、解析対象に関する最適構造解析を行っている。 まず、カンチレバー形式橋梁の境界条件を前提とする解析領域について、昨年度よりも詳細なトポロジー最適化計算を行った。実橋としてのフォース橋が存在するため、その中間支点の構造を反映した境界条件についても検討し、実橋と類似性のある最適形状を得ている。また、共同研究者の所属している広島大学でも、異なる計算アルゴリズムによる構造最適化解析を行い、その結果を国際会議で発表している。 次の解析例として、周期性構造物の最適形状も周期性を持つという昨年度の解析結果に基づいて、単純支持ばりモデルの最適構造解析を行った。等分布荷重を受ける多径間連続ばりの一径間のみを取り出し、それを単純ばりとしてモデル化し、支点及び等分布荷重の高さ方向位置を3段階に変化させた計9通りのパラメトリック解析を行った。その結果、二次元ではあるが、最適構造に関する軸線構成を提案することができた。なお、この結果を土木学会の東北支部で発表した。また、土木学会全国大会でも発表予定である。 また、櫛の歯形状とストレイトピンを用いた接合構造における発生応力に関する二次元数値解析を実施し、噛み合わせの歯の枚数とピン直径が最大発生応力に与える影響を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画2年目である2019年度は、トポロジー最適化に関する市販プログラムおよびフリーソフトによる比較・検討を行いながら、2018年度よりも詳細な構造最適化計算を行った。 まず、カンチレバー形式橋梁の境界条件を前提とした最適形状を検討した。昨年度の予備解析により、初期解析領域の設定方法が解析結果に少なからず影響を及ぼすことが分かっているため、カンチレバー形式の固定端における節点と境界条件の設定方法についても検討し、さらに実橋としてのフォース橋の中間支点の構造を反映した境界条件をも採用して検討した。この結果として実橋と類似性のある最適形状を得たが、数値解としての最適解と現実的な設計に基づく実橋形状を比較することで有意義な検討ができた。また、共同研究者(広島大学)において開発した異なる計算アルゴリズムに基づく構造最適化解析を行った結果とも比較・検討しており、その結果を国際会議で発表している。 次の解析例として、周期性構造物の最適形状も周期性を持つという昨年度の解析結果に基づいて、単純支持ばりモデルの最適構造解析を行った。等分布荷重を受ける多径間連続ばりの周期性構造から最適構造を構成する基本モジュールを取り出して単純支持ばりとして単純化し、支点及び等分布荷重の高さ方向位置を3段階に変化させた計9通りのパラメトリック解析を行った。その結果、二次元最適構造として試作を検討するための軸線構成を提案した。 また、モジュール同士の接続形式については、これまでに開発されたパネル橋であるBailey橋やMGBなどの実例を調査し、櫛の歯形状とストレイトピンを用いた接合構造に着目した。この接合形式では、櫛の歯形状や歯の数に関する力学特性が明らかになっていないため、発生応力に関する二次元数値解析を実施し、噛み合わせの歯の枚数とピン直径が最大発生応力に与える影響を調べた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究の方針については、当初の研究計画から大きく変更する点は無い。具体的なパネル橋を構成するために、基本モジュールを並列に多連結することを念頭において、基本モジュールの三次元形状を2020年度内に設計する事である。カンチレバー橋としての最適構造及び周期性構造物の構成する基本モジュールの骨格形状を設計するために、トポロジー最適化解析を継続して実施しながら、共同研究者との議論を通して最終決定する予定である。 また、モジュール同士の接合方式として、パネル橋であるBailey橋やMGBなどでは櫛の歯形状とストレイトピンを用いた接合構造を採用しているが、櫛の歯形状や歯の数に関する力学特性が明らかになっていないため、設計方法が確立していない。そこで、噛み合わせの歯の枚数とピン直径などが最大発生応力に与える影響を調べるため、接合部に発生する応力に関する数値解析をさらに実施する予定である。 本研究で提案するモジュール橋梁の縮小モデルの試作については3Dプリンタの利用を検討しており、3Dプリンタ用のCAD図面データ作成のための作業にも着手する予定である。3Dプリンタによる縮小モデルの試作は、まさにプロトタイプ開発における予算の有効活用及び製作の時間短縮などのメリットが得られると期待している。 さらに、単位モジュールをフロートの上に設置すれば単位浮体モジュールとなり、これを並列に接合すれば、河川上あるいは海上における長大な浮体橋(ポンツーン)を構築することが可能となる。フロートの浮体構造としては種々の材料及び形状のものが考えられるが、まずは一般的に入手可能な転用型浮体構造を想定している。動揺構造物の接合方法については、別途検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
中沢が2018年度に計上していたトポロジー最適化計算用ソフト代は40万円であったが、(税別35.6円)+消耗品で残額が生じた。また、2018年度に計上していた接合検討用消耗品等40万円を使用せず、2019年度のトポロジー最適化計算用ソフト代(税別35.6万円)+消耗品の継続に変更した。それらの残額が合算され、90,259円の残額となった。この残額については、2020年度の試作用消耗品と合算して使用する予定である。 近広が2018年度に計上していた接合検討用消耗品と謝金等の残金(219,913円)が、2019年度に謝金や旅費等に変更され、その残り26,081円が残額となった。この残額については、2020年度の消耗品として使用する予定である。
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