本研究では,低温条件下における無機活性剤添加によるMBRの膜ファウリング抑制効果を検証すると共に、低温時にバイオポリマー分解に寄与する細菌の単離および単離菌の生理活性評価を目的として研究を行った。 ウォータージャケットを装着した有効容積10 Lの水槽に、孔径0.1マイクロメートルのPVDF製平膜(東レ製)を3枚(有効膜面積:0.06 m2)浸漬し、定流量吸引ろ過運転を行った。 活性剤添加によってろ過抵抗の上昇が抑制されたことから、無機活性剤の添加に伴って不可逆的な膜ファウリングの進行を抑制できることが明らかとなった。これより、25℃で有効性が実証された無機活性剤は、10℃の低温運転においてもファウリング抑制に有効であることが示された。バイオポリマー濃度の経日変化を調べた結果、活性剤を添加した系では、無添加の系と比較してバイオポリマー濃度が100 mg/L 程度低い値を示し、無機活性剤添加によって膜ファウリングの原因とされるバイオポリマーが低減できることが明らかになった。フミン酸濃度も活性剤の添加によって徐々に低下することが明らかになった。 続いて、無機活性剤添加により増殖した細菌を特定するため、バイオポリマーを基質とした寒天培地で30℃および10℃で単離した細菌株およびそれらの生理活性を調査した。低温MBRにおいて、無機活性剤の添加により、Pseudomonas属細菌,E. sibiricumが増殖・機能化し、これらの細菌が体外に分泌した酵素により多糖類が分解されたことでバイオポリマー低減につながったことが示唆された.
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