本研究は、高齢者・障がい者・子どもなど多様な人々が各自のできることを活かして互いに支え合う関係を構築し、それを地域で支える複合福祉施設を「相互支援を誘発する複合地域拠点」と呼び、そのような拠点整備促進に向けた事例調査及び自治体支援策の調査を行った。 まず、事例調査としては、2015年9月の関東東北豪雨で被災した常総市において複合地域拠点整備を進めた事例を対象に、整備主体である地元NPO法人や専門家の協力を得て、整備プロセスの参与観察調査及び記録資料の整理を行い、視点①相互支援を誘発する条件・運営(ソフト)、視点②相互支援を誘発する空間デザイン(ハード)、視点③法制度との整合性について、拠点整備プロセスの詳細分析を行った。その結果、視点①の相互支援プログラムは、地域のニーズに合わせて多面的に展開するが、既存建物の改修を通じた拠点整備の場合、視点③の法制度との整合性が、視点②の相互支援を誘発する空間デザインを強く規定することが明らかになった。そのため、自由度の高い空間デザインを実現するには、建物改修に高度な知識や経験を有する設計者の存在が欠かせないことが明らかになった。 本研究の対象事例は、コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年2月にオープンした。その後の感染症拡大により、当初予定していた活動をそのまま実施することは難しく、状況変化に合わせて活動内容を何度も見直しながら運営している状況にあり、現時点で汎用性ある拠点整備マニュアルの作成は困難な状況にある。 そのため、本研究では、事例分析を通じて、重要性が明らかとなった自治体による拠点整備促進策に関する調査を追加で実施した。財政的・人員的制約が大きく、私有空間を活用した拠点整備の必要性が高い地方小自治体を対象に、拠点整備促進策の実態と課題に関する全国調査を実施し、拠点の整備実績と整備促進に向けた課題を抽出した。
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