研究課題/領域番号 |
18K18906
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
浅井 圭介 東北大学, 工学研究科, 教授 (40358669)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / 回転翼 / 低レイノルズ数 / 感圧塗料 / 寿命計測 |
研究実績の概要 |
本研究は,感圧・感温塗料に寿命法を適用し,パルス光励起による発光減衰から高速で回転するローターの表面圧力場とせん断応力場を求める手法を実現し,空気力発生のメカニズムを明らかにすることを目的とする. 今年度は研究の第一段階として,アスペクト比2の矩形平面のローター2枚からなる回転翼模型を製作し、感圧塗料の寿命法による圧力分布計測を試みた.感圧塗料には,低圧環境下での試験に適しているバインダ(PTMSP)と白金ポルフィリン (PtTFPP)からなる感圧塗料を調合して使用し,光源にはパルス駆動が可能なUV-LEDを,カメラにはマルチゲート機能を持つCCDカメラを用いた.ブレードがレーザービームを横切るときのフォトセンサーの出力波形をUV-LEDおよびカメラのトリガー信号とし,回転位置を位相固定しCCDセンサーに光信号を蓄積した.実験に際しては,励起光のパルス幅,ゲートの幅および露光タイミングを事前にチューニングし,信号雑音比が最大になるよう調節した.真空チャンバーの実験では,内圧を10kPaまで減圧し,ローターの回転数は2,400rpmに固定した.この時のレイノルズ数はRe = 8,300となる. この条件下でピッチ角 0°から 20°までピッチ角を増大させた場合の計測を行った.その結果,翼前縁部に形成された剥離渦による低圧領域と翼端付近での翼端渦との干渉によるものと思われる低圧領域が観測された.これらの結果は,昇華性化合物を利用して行ったブレード表面のせん断応力場の可視化画像とも良く一致しており,希薄大気中でのローターの推力発生に前縁剥離渦が大きく関与していることが明らかになった. 今後の課題としては,定量性の改善が挙げられる.そのためには今回は考慮しなかった PSP の温度補正を行う必要がある.次年度はその対策に取り組み,計測精度を向上させた実験を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期実験で流れ場の概要が把握できた.実験は順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
次年度はまず,感温塗料を用いた温度補正法の開発に取り組み,その後,チャンバー内圧や回転数を変え,レイノルズ数,マッハ数など相似パラメータを変えたときのデータを取得する.これらの実験で得られた知見から,それぞれの相似パラメータと空気力発生メカニズムとの相関を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末にカメラが故障し,その修理が年度越しになった.それまでの間の実験はJAXAから同型のカメラを借用して行った.
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