研究課題
本研究は,感圧・感温塗料に寿命法を適用し,パルス光励起による発光減衰から高速で回転するローターの表面圧力場とせん断応力場を求める手法を実現し,空気力発生のメカニズムを明らかにすることを目的とする.今年度は昨年度の再現性確認実験から始めたところ,バインダ(PTMSP)と白金ポルフィリン (PtTFPP)からなる感圧塗料には非可逆的な反応による誤差が生じることが明らかになった.原因究明のための系統的な実験を行った結果,この誤差が時間とともに蓄積することが判明し,その原因が有機物など分子の吸着であることが示唆された.この問題を解決する方法の一つとして色素の混合量の影響を調べたが,誤差は色素量の増加とともに低減するが完全には無視できないことがわかった.そのため,バインダをフッ素ポリマ(poly-HFIPM)に変更し圧力計測をやり直し,翼前縁部の剥離渦による低圧領域を可視化することに成功した.PSP の最大の誤差要因である温度の影響の補正には感温塗料(TSP)を用いる方法を選び,回転翼実験ではRu錯体をセンサー分子とするTSPを用いた.これと並行して,ローターの推力特性を向上する効果があると言われているトンボの翅を模したコルゲート翼の実験を火星風洞において行い,凹凸部の圧力分布とシュリーレン画像の撮影に成功した.これらの成果については,それぞれ学術誌への論文投稿の準備中である.また,一連の成果を2020年1月に開催された米国航空宇宙学会においても招待講演として発表したところ,NASAの火星ヘリコプターのブレード開発に係わるエイムズ研究センターの研究員や英国インペリアルカレッジの専門家の注目を集め,今後の国際共同研究に向けた道筋を築くことができた.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Journal of Physics D: Applied Physics
巻: 53 ページ: 1-8
10.1088/1361-6463/ab598b
Journal of Fluid Mechanics
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